国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産への登録が決まったことで「和食」への評価が高まる中、定番中の定番である「みそ汁」に改めて注目が集まっている。
和食の弱点は塩分が多めになりがちなこと。中でもみそ汁はこれまで塩分過多の「主犯」という扱いを受けてきた。しかし、最新の研究データによれば、みそ汁の塩分は和食の献立の中で取り立てて多いわけではなく、塩分過多については「冤罪」である可能性が高まってきた。さらに、みそ汁にはビタミン、ミネラルなどが豊富に含まれ、その効果で健康にプラスの影響があるとの研究結果も出ている。どうやら、わたしたちにとって最も身近な和食であるみそ汁を見直す必要がありそうだ。
日本のみその起源については、古代中国の発酵食品である「醤(しょう=ひしお)」が朝鮮半島から伝わったというのが通説。ただ、現代のみそのルーツは、縄文時代から食べられていた日本独自の発酵食品だとの意見もある。文献に登場するのは飛鳥時代末で、701年に制定された大宝律令で「主醤(ひしおのつかさ)」という役職が扱う調味料の一つに定められた「未醤」が、みその前身だと考えられている。
鎌倉時代の武士が食事の基本とした「一汁一菜」の一汁は、みそ汁であったとされる。簡素な献立の中に栄養バランスに優れたみそ汁を入れることで、鎌倉武士の質実剛健な生活が実現できたのだろう。江戸時代になると、庶民の食生活でもみそ汁は一般的な献立になった。江戸前期の元禄年間に著された「本朝食鑑」では、みそは健康に役立つ万能食品であると評価されし、庶民にも「みそ汁を飲めば医者要らず」という認識が定着していたとされる。
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