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宮崎駿監督 引退会見詳報

僕の時代は終わった

 「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」などのアニメ映画を数多く手掛けた宮崎駿監督が2013年9月6日、東京都武蔵野市のホテルで長編製作からの引退記者会見を行った。イタリア・ベネチア国際映画祭での衝撃の引退発表から5日。アニメーション映画の巨匠が「引退」についてどのような肉声を発するのか関心が高まり、600人を超える内外の報道陣が集まった。

 会見冒頭、「何度もやめると言って騒ぎを起こしてきた人間なので、どうせまただろうと思われているかもしれないが、今回は本気です」と明言した宮崎監督。同席したスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサー、星野康二社長と共に引退の経緯を説明しつつ、現在の心境、今後のビジョン、アニメ映画の監督としてのこだわりなどを語った。以下、会見での主なやり取りをまとめた。

―引退を決めた理由は?

 (最新作の)「風立ちぬ」は「崖の上のポニョ」から5年かかりました。この間、いろんなことをやっているものの、どうしても5年かかるんです。次の作品を考えると、この年齢だから5年では済まず、6~7年かかるだろう。あと3か月もすれば73歳になるので、それから7年後だと80歳になります(※宮崎監督は1941年1月15日生まれ)。

 アニメーションの監督といっても仕事のやり方はさまざまで、僕の場合はアニメーター出身なので描かないと表現できない。そうなると、眼鏡を外して(実際に作業の様子を表現しながら)こうして延々と描かなければいけなくなります。どんなに体調を整えて節制していても、集中できる時間が年々減っていくことは確実で、実際、「ポニョ」の時よりも机を離れる時間が30分早くなっています。物理的な加齢で発生する問題はどうすることもできず、違うやり方ができるなら、とっくにやっている。僕は僕のやり方で自分の一代を貫くしかないと思うので、長編アニメーションは無理だと判断しました。

 この前お会いした(作家の)半藤一利さんは83歳ですが、背筋が伸び、頭もはっきりしている。今の半藤さんのように、あと10年は仕事を続けたらいいのだけれど、今までの延長線上には自分の仕事はないだろうと思っています。僕の長編アニメの時代は、はっきり終わったんです。もし自分が(再び)「やりたい」と思っても、それは年寄の世迷言であると片付けようと決めています。

―鈴木プロデューサーとの具体的なやりとりの内容は?

 よく覚えていないが、「鈴木さん、もうだめだ」と僕が言い、鈴木さんは「そうですか」と答えた。「やめよう」という話は二人で何度もやってきたことなので、鈴木さんが信用したかどうか分かりません。今回、次は7年もかかることに鈴木さんがリアリティーを感じたのでしょう。

 ※この時期について、鈴木プロデューサーは「風立ちぬ」の初号試写があった6月19日の直後と説明。「宮さんは、死ぬ間際まで作り続けるか、宣言して別のことに取り掛かるか、どちらかだと思ったので、予想の中に入っていた」と語った。また、ベネチア国際映画祭で引退発表を行ったことに関しては、「宮崎監督は外国に友人が多い。ベネチアだと一度に発表でき、いろんな手続きを減らすことができる」と、その理由を話した。

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