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プロ野球 スターをどう育てる

日米の共存共栄は可能か

 プロ野球は2012年、金本(阪神)や小久保(ソフトバンク)ら一時代を築いた大物が相次いで引退した。フリーエージェント(FA)やポスティングによる米大リーグへの移籍も恒常化し、国内のスターが小粒化した印象は拭えない。球界が「流出」に負けないペースで次世代のスターを育てるためにはどうすべきなのか――その現状と課題を探った。

 12年秋、1人の高校生が日本球界にショックを与えた。160キロの速球を持つ岩手・花巻東高の大谷翔平投手はドラフト会議の4日前に、米大リーグへの挑戦を表明。1位で強行指名した日本ハムの熱意に押され、日本でプロとしての第一歩を踏み出すことを決めたが、今後も似たケースが出ることを予感させた。

 1995年に野茂英雄が大リーグに渡って成功して以降、日本から有力選手が次々と渡米。公認エージェントの長谷川嘉宣氏は「野茂やイチローの大リーグでの活躍を小さい頃に見た子が憧れるのは当然。アマから米国へという流れは止められない」と予測する。

 2008年に社会人でドラフト1位候補の田沢純一がレッドソックス入り。危機感を持った日本のプロ12球団は、指名を拒否した選手が将来日本に戻っても一定期間は受け入れないことを申し合わせた。しかし、どんなルールがあっても個人の意思は変えられない。

 米国でも若者の野球離れがあり、特に内野手不足だといわれる。質の高い日本選手が来れば渡りに船。長谷川氏は「米国で苦労することで選手や指導者として幅が広がる。その経験を日本に帰って若い人に伝えるのはいいこと」と主張する。

 しかし、フリーエージェント(FA)やポスティングで次々と有力選手を失う日本球団にとっては、経営にも影響する問題。日本ハムのように、まずは日本で力を付けることのメリットを丁寧に説く作業も必要だろう。

 大阪桐蔭高の西谷浩一監督は「10代の選手が育つ環境としては、日本の方がいい」と言う。巨人の桃井恒和社長は「高校生、大学生に日本の球団の施設や育成システムを見学させる機会があってもいい」と考えている。(運動部・浦俊介、仙台支社・鈴木雄大)

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