南沙諸島や尖閣諸島、竹島など、東アジア地域での領有権をめぐる問題が先鋭化する中、周辺各国では、海上戦力の増強・近代化をする動きが強まっている。特に中国では2012年9月に、同国初となる空母「遼寧」を就役させた。
また、韓国では全通型飛行甲板を持つ強襲揚陸艦「独島」を07年に配備。日本でも、既に就役しているヘリコプター搭載護衛艦「ひゅうが」「いせ」に続き、さらに一回り大型のヘリコプター搭載護衛艦を建造している。いずれも全通型飛行甲板を備えた「空母型」の形状だが、運用できる航空機はヘリコプターだけの「多目的艦」だ。
東アジアの軍事バランスにも大きな影響を与える「空母型」艦艇について、そのスペックや目的を紹介する。
◇中国「遼寧」
12年9月に就役した中国海軍初の空母。ソ連崩壊に伴う混乱の中で、未完成のままウクライナの造船所に放置されていた旧ソ連海軍の空母「ワリャーグ」を中国が購入し大連で改装、完成させた。満載排水量約6万7000トン、全長約300メートル。
オリジナルのワリャーグは30ノット程度の速力が出るだけの機関を搭載していたが、中国は購入後に大掛かりの改装を加えており、最大速力がどの程度かは明確になっていない。対空ミサイルのHQ10や30ミリの近接防御用機関砲、対潜ロケットも装備している。
最大の攻撃力となる艦載機は、固定翼機がロシアのスホイ33を基に開発したといわれる「殲15」(J15)を18~22機程度とされる。そのほかにヘリコプターを10機前後搭載できるとみられている。
ただし、米空母と違い、蒸気の力を利用して艦載機を打ち出す「カタパルト」は装備していない。艦首部の飛行甲板に傾斜を付けた「スキージャンプ台」を使用し、航空機自体の推力で飛び立つ構造になっている。スキージャンプ台があっても滑走距離が短いため、艦載機は武器や燃料搭載量制限されることになる。このほか、艦載機を着艦させるためのアスレティング・ワイヤー(着艦拘束装置)も信頼性の点で未知数だ。「遼寧」は、あくまで本格的な国産空母の建造に向けた実験艦的な意位置付けとの見方も強い。
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