オスプレイの行動半径を地図で示してみると、沖縄県の普天間飛行場を中心にした場合、600キロの範囲に尖閣諸島、石垣島などの八重山諸島、さらには台湾の北端部までが入る。空中給油1回で行動できる半径1000キロのエリアになると、東シナ海全域に加え、台湾全島、中国の浙江省、福建省の沿岸部までが含まれる。
山口県の岩国基地を起点にした場合、600キロでは朝鮮半島の軍事境界線までしか行動範囲に入らないが、1000キロでは北朝鮮のほぼ全域から中国の山東半島の先端部、さらに上海市までが収まってしまう。空中給油の回数に制約はないので、理論上は搭乗員の体力が続く限り、作戦行動半径を広げることができる。
また、オスプレイはプロップローターや主翼を折り畳むと、長さ19.2メートル、幅5.8メートル、高さ5.6メートルのスペースに収まる。航空母艦や強襲揚陸艦はもちろん、全通型の飛行甲板を持たない揚陸輸送艦の格納庫にも、余裕を持って搭載できるサイズだ。海上を自由に移動する空母や強襲揚陸艦と行動エリアが広いオスプレイをセットにすると、米軍の作戦行動の自由度はさらに広がる。
オスプレイ1機で運べるのは歩兵2個分隊か貨物9トン程度とはいえ、佐世保にも配備されている米海軍のワスプ級強襲揚陸艦には最大12機が搭載できる。オスプレイが12機あれば、歩兵1個中隊と支援火力を一挙に輸送することが可能で、その攻撃力は決して侮れない。
ステルス戦闘機のような派手な存在ではなくても、北朝鮮問題や島しょ防衛といったわが国を取り巻く安全保障の課題の中で、オスプレイの軍事的価値は極めて大きい。存在そのものが周辺諸国への無言の圧力となる点も合わせると、米国が地元の反対の声を無視して、オスプレイを日本に配備しようとする意図が理解できる。
新着
会員限定