会員限定記事会員限定記事

【特集】一からわかるミサイル防衛

2012年03月12日15時00分

弾道ミサイルとは

 ミサイルとは、ジェットエンジンやロケットモーターなどの推進システムを搭載し、何らかの誘導方式で目標への自律飛行ができる無人航空機の総称。有人航空機と同様に大気圏内を飛行するタイプと、いったん超高空まで上昇し、一気に目標まで落下するタイプがあり、後者は大砲の砲弾のような放物線軌道を描くことから、「弾道ミサイル」と呼ばれる。

 弾道ミサイルは主に空気抵抗の少ない高空を飛行するため、限られた推力でも重い弾頭を遠くまで運べるというメリットがある。核爆弾などの大量破壊兵器で敵国を攻撃する手段としては、有人航空機に比べるとコストパフォーマンスに優れている。

 空気の薄い超高空や大気圏外を飛行することから、燃焼に空気を必要としないロケットモーターが推進力に利用される。ロケットモーターは構造が比較的単純で、高度な技術力を持たない国家でも生産できるという特色がある。北朝鮮やイラン、パキスタンなどが弾道ミサイル開発に熱心なのは、超大国の援助を受けなくても、周辺国に脅威を与える大量破壊兵器を保有可能になるからだ。

 大気圏外から超高速で落下してくる弾道ミサイルを、通常の対空兵器で撃墜することはできない。第2次世界大戦中にナチス・ドイツが開発し、世界で初めて実戦に投入された弾道ミサイル「V2」は、1944年9月から翌年5月のドイツ降伏までに1000基以上が英国に撃ち込まれた。しかし、当時の軍事技術で弾道ミサイルを防御することは不可能で、英国は死者およそ2500人、負傷者約6000人という大きな犠牲を出した。

 80~88年にわたって続いたイラン・イラク戦争では、双方がソ連製「スカッド」を中心に合計500基以上の弾道ミサイルを撃ち合った。両国はいずれも弾道ミサイルに対する防衛手段を持たず、死傷者は数千人に及んだとされる。

 90~91年の湾岸戦争では、米国を中心とした多国籍軍に攻撃されたイラクが、反撃のためにイスラエルとサウジアラビアに向けて合計86基の弾道ミサイルを発射した。米軍は、対抗手段として地対空ミサイル・パトリオット「PAC2」を配備していたが、飛来したミサイルの大半は阻止することができず、大きな損害を被った。

新着

会員限定

ページの先頭へ
時事通信の商品・サービス ラインナップ