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【特集】日の丸ステルス F35

気になるお値段

 納税者にとって一番の気掛かりは、F35Aがいったいいくらで買えるのかという点だろう。ロッキード・マーチン社はF35Aの価格を1機6500万ドルと説明しており、1ドル=80円で換算すると52億円になる。

 外国製や共同開発の航空機の調達価格はライセンス生産に必要な費用や為替レートなどによって変動する部分があるので分かりにくいが、航空自衛隊の戦闘機の場合、F15J、F2いずれも1機当たり120億円程度とされる。ただし、F35AがF15JやF2の半額以下で買えると考えるのは早計で、ロッキード・マーチン社が示したのは、米軍仕様のF35Aの大まかな量産単価にすぎない。

 航空自衛隊がF35Aを配備する場合、短距離ミサイルの90式空対空誘導弾(AAM3)、04式空対空誘導弾(AAM5)、中距離ミサイル99式空対空誘導弾(AAM4)などの国産装備を搭載できるようにしなければ、運用しにくくなってしまう。それを実現するには、ウエポンベイの改造だけではなく、火器管制システムのソフトウエアを書き換えるなど、大掛かりな改修が必要で、費用はそれなりにかかる。

 また、防衛省はFX採用の条件として、国内企業に機体やエンジンの生産、整備を部分的に任せることを挙げており、F35AのFX選定に当たり、米政府とロッキード・マーチン社は機体の最終組み立て、検査のほか、主翼、尾翼、胴体後部の製造とエンジン組み立てに日本企業が参画することを認めている。この条件は国内企業に仕事を与え、航空機生産の技術力を維持することに目的があるが、新たな設備投資やライセンス費用も必要で、その経費は調達価格に上乗せされる。

 F22ラプターの米軍納入価格は平均でおよそ1億5000万ドルとされるが、日本が輸出の可否を打診した当時、仮に輸出を承認しても、価格は米軍納入価格の約1.7倍に当たる2億5000万ドル程度になると伝えられた。その図式がF35Aに当てはまるわけではないが、現用のF15JやF2を上回る価格になることは覚悟しておく必要がある。防衛省は12年度の当初予算案にF35Aの調達費として4機分395億円を盛り込んだが、あくまで当該年度の予算計上額なので、1機当たり98億7500万円で必要な機数すべてが調達できるということにはならない。

 13年度当初予算案に、防衛省は2機分の調達費として299億円を計上した。1機当たり149億円と前年度に比べ単価がおよそ1.5倍に跳ね上がったが、これは同年度契約分(実機の調達は17年度以降)から機体の組み立てが国内で行われるようになり、米国に支払う技術移転料(ライセンス費用)が上乗せされたためだ。このほか、組み立て工場の整備費などで830億円、実戦運用に向けた教育訓練用機材の経費211億円が計上されており、これらもトータルの調達価格に含めて考える必要がある。また、F35Aは開発途上の機体なので、当面は細かな改修が続けられる。それに伴う改修費用などが追加されれば、1機当たりの調達価格はさらに上昇する可能性があり、最終的なお値段がいくらになるかは、分からないのが現状だ。

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