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【特集】日の丸ステルス F35

機内搭載兵器の多様化が課題

 もちろんF35Aに問題点がまったくないわけではない。特に、機体の小ささは被視認性が低いという部分でメリットとなる反面、機体内部のスペースが限られるというデメリットを生んでいる。ステルス戦闘機は機体を「クリーン」な状態で運用できるように搭載兵器を収納するウエポンベイ(兵器倉)を機内に設けているが、F35Aはそのウエポンベイの容量に余裕がなく、ステルス戦闘機としての運用に制約が出かねないのだ。

 機体サイズが一回り大きいF22は、機体下部に2カ所、機体の左右側面に1カ所ずつ、計4カ所のウエポンベイがあり、その容量はF35Aよりもはるかに大きい。空対空ミッションの場合、F22はAIM9短距離空対空ミサイルを機体側面のウエポンベイに1基ずつ計2基、AIM120C中距離空対空ミサイルを下部ウエポンベイに3基ずつの計6基搭載できる。

 これに対し、F35Aのウエポンベイは機体下部の2カ所しかない。初期量産型の場合、各ウエポンベイに2つずつの兵装ラックが設けられているが、機体中心線に対し内側のラックはAIM120C中距離空対空ミサイルの専用、外側ラックは2000ポンド級までの爆弾など対地攻撃兵器の搭載用で、その他の兵器を携行したければ、主翼と胴体下にある計7カ所のハードポイント(重量物を搭載できるように機体の強度を高めた部分)にパイロン(兵装をつり下げるアタッチメント)を設置して搭載するしかない。

 F35Aが航空自衛隊に配備されれば、領空侵犯機への対処が主要な任務となるが、この仕事には短距離空対空ミサイルが必須。現行の仕様では、短距離空対空ミサイルをウエポンベイに搭載することはできず、主翼下につり下げることになり、ステルス性能が低下するだけでなく、速度や機動性にも大きく影響する。主要任務で売り物のステルス性能が限定されるようでは、航空自衛隊がF35Aを導入する意味がなくなってしまう。

 ロッキード・マーチン社では今後、F35のウエポンベイの改良を進め、ラックの追加や改良により、最終的には合計で短距離空対空ミサイル4基、中距離空対空ミサイル8基を搭載できる仕様にする計画だという。ラックを取り替えれば、中距離空対空ミサイルの代わりに対艦ミサイルや誘導爆弾などの対地攻撃兵器も搭載できるということなので、F35Aがこなせるミッションの選択肢を狭めないためにも、航空自衛隊が調達する機体には搭載兵器を多様化できる改修がぜひとも必要だ。

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