F35Aには、レーダーをはじめとした各種の高感度センサーが備えられているが、そこから得た情報をパイロットが迅速に把握できなければ意味がない。F35Aはコックピット前面に大型の液晶ディスプレーが設置され、自機を取り巻く状況が一目で分かるようになっている。これまでの軍用機は、センサーから得た情報はそれぞれ別の計器で表示されていたが、F35Aの場合、異なるセンサーの情報をコンピューターが統合し、ビジュアルな形でディスプレーに表示するので、パイロットの負担は大幅に減った。
ディスプレーは戦闘機としては世界で初めてタッチパネル方式を採用し、画像の切り替えや拡大・縮小はもちろん、使用する武器の選択なども指先だけで操作することが可能だ。タッチパネルは極めて高感度にできており、グローブをはめたままでも確実に反応する。また、コックピットの正面方向に情報を投影するヘッドアップディスプレーは装備せず、ヘルメットのバイザーの内側に画像を表示する方式を導入、パイロットが前を向いていなくても、必要な情報が得られるようになっている。多用途戦闘機の多くは複座で、パイロットは操縦に専念し、オペレーターは索敵と火器管制を担当するのが普通だが、単座戦闘機のF35Aはパイロットが一人で複数の役割をこなさなければならないので、コックピット内での作業量を極力減らし、戦闘中にオーバーワークとならないようにしている。
操縦はシートの右側にあるジョイスティック型の操縦桿と、逆側にあるスロットルレバー(エンジン出力を調整する装置)で行い、足下にあるペダルは原則として地上滑走時にしか使わない。操縦桿やスロットルレバーのグリップには多くのスイッチ類が取り付けられており、パイロットは手首から先を動かすだけで機体の姿勢や進行方向の変更、スピードの調節、武器の射出といった一連の操作ができ、大きなGが発生する高機動飛行中でも肉体的負担は最小限で済む。
実機の操作性について、ロッキード・マーチン社のアル・ノーマン主任テストパイロットは「クセがなく、操縦しやすいイージープレーン」だと評価している。また、「スポーツカーのように軽快な動き」が特長で、ジョイスティック型操縦桿の微妙な動きにも機体は敏感に反応するという。ステルス性能のために機動性が犠牲にされることはなく、むしろ小回りの利く機体に仕上がっているようだ。
新着
会員限定