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【特集】日の丸ステルス F35

ファーストルック、ファーストショット

 製造元のロッキード・マーチン社は、ステルス戦闘機のキャッチコピーとして、「ファーストルック、ファーストショット、ファーストキル」という言葉を掲げている。敵機を先に発見し、先制攻撃を仕掛け、敵機がこちらの存在に気付きもしないうちに撃墜する―という意味だが、F35Aはステルス性能だけでなく、高感度のセンサー類、センサーがとらえた情報を統合して攻撃に生かす最新のアビオニクス(航空機搭載用電子機器)を備えており、これらを組み合わせることで、キャッチコピー通りの戦果が期待できる。

 F35Aが機首に搭載するAN/APG81アクティブ電子走査アレーレーダーは、レーダー視野内の対空目標をわずか10秒で最大23個まで認識する能力がある。また、合成開口レーダーの機能も持っており、対地モードに切り替えるとマイクロ波で地上を走査し、地形イメージを画像化してくれる。AN/APG81はF22戦闘機に搭載されたレーダーの改良版だが、F35はF22より10年遅れて開発が始まったため、10年分進んだテクノロジーを投入して機能は大幅に向上した。このレーダーが現段階で世界最高レベルにあるのは間違いなく、F35Aは「ファーストルック」のアドバンテージを生かして常に有利な位置から攻撃を仕掛けることが可能だ。

 また、F35Aは機体の周囲6カ所にAN/AAQ37電子光学分配開口システムを装備、機体の全周を監視して敵機の位置を正確に把握する。AN/AAQ37はレーダー波を発していないターゲットでも赤外線探知を利用してとらえ、6カ所のセンサーが集めたデータは搭載コンピュータが統合した上で、自機を中心にした周囲の状況をパイロットに提供する。

 機首下面にあるドーム状の収納部には電子光学目標表示システムのセンサーが納められ、敵と判別したターゲットを追跡する。自ら電波を発するレーダーは自機の存在も知られてしまうという問題を抱えているが、この装置はターゲットが発する熱と周囲の温度差を検知してその位置を認識する仕組みになっている。電子光学目標表示システムだけならば相手の注意を引くことがないので、察知される前に先制攻撃を仕掛ける「ファーストショット」が可能になる。

 これに加え、F35Aは各機のセンサーがとらえた情報を相互にやり取りするネットワーク機能を備えており、同じ編隊の戦闘機や後方で戦況を監視する空中警戒管制機(AWACS)から送られてくるデータも自機に取り込んで、周囲の状況を的確に把握できる。単座戦闘機の場合、操縦と周囲の状況把握、火器管制を1人の搭乗員が同時にこなさなければならないが、F35は状況把握の大部分が自動化され、パイロットは戦闘行動に専念して敵機を確実に仕留める「ファーストキル」が実現できるというわけだ。

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