F35の飛行性能はすべてが明らかになっているわけではないが、航空自衛隊が導入するF35Aは最高速度がマッハ1.6、航続距離は約2200キロとされている。航空自衛隊の現用主力機であるF15Jは最大速度マッハ2.5、航続距離約4600キロ、既に退役を始めているF4EJ改戦闘機でも最大速度マッハ2.2、航続距離約2900キロと、いずれの数値もF35Aを上回っている。F15、F4はともにエンジン2基の双発機で、単発機のF35Aはパワーの面で見劣りがするようにも思えるが、果たしてそうなのだろうか。
ここで注意しなければいけないのは、現用のF15、F4の場合、最高速度は武装や増加燃料タンクを携行せず、機体そのものの空気抵抗しか受けない状態(軍用機の世界では、これを「クリーン」な機体と呼ぶ)で計測したものであることだ。一方、航続距離は機内の燃料タンクだけでなく、機外に増加燃料タンクを搭載した時の最高値で、増加タンクがなければ、航続距離はずっと短くなる。これに対し、F35Aは武装を機体内部のウエポンベイに収納した「クリーン」な状態での最高速度であり、航続距離も機内の燃料タンクのみでの飛行を前提としている。
領空侵犯を受けてF15やF4がスクランブル発進する場合、機外に空対空ミサイルを搭載しないわけにはいかないし、ターゲットとの距離が遠ければ増加タンクも必要になる。機外の搭載物が多ければ、それだけ機体の空気抵抗は「クリーン」な状態より大きくなり、マッハ2を超える速度を出すことが難しいのはもちろん、加速や旋回性能にも影響が及ぶ。つまり、F15やF4がカタログスペック通りの性能が出せるのは、ミサイルをすべて撃ち終え、増加タンクも捨てて戦場を離脱する時ぐらいしかない。一方、常に「クリーン」な機体でミッションに臨むことができるF35Aは、戦闘行動中にもマッハ1.6の最高速度を出してターゲットに攻撃を仕掛けることが可能で、戦闘機としての総合力は旧世代機と比較にならないほど高い。
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