政府は2016年度から調達を始める航空自衛隊のFX(次期主力戦闘機)に、米ロッキード・マーチン社のF35AライトニングII戦闘機を採用することを決めた。F35Aはレーダーに探知されにくいステルス性能を持つ「第5世代」戦闘機で、今後のスケジュールが順調に進めば、12年度予算に最初の調達費が計上され、16年度中に「日の丸ステルス戦闘機」が日本の空の守りに就くことになる。
航空自衛隊は老朽化したF4ファントム戦闘機を代替するFX候補として、F35Aのほか米ボーイング社のFA18スーパーホーネット、英国など欧州4カ国が共同開発したユーロファイターの3機種を対象に検討を進めていた。性能、価格、運用のしやすさなど、三者三様のメリット・デメリットがあったが、ステルス機の独自開発を進めている中国の動向なども見据え、総合的な性能が最も高いF35Aを選定した。
F35は米国の空軍、海軍、海兵隊が使用する作戦機を、ひとつの原型機から発展させる「統合攻撃戦闘機(ジョイント・ストライク・ファイター=JSF)」計画に基づいて開発中の最新鋭機。米国に加え、英国、イタリア、オランダ、カナダ、オーストラリア、ノルウェー、トルコなども参加した国際共同プロジェクトの形式で開発は進められている。プロジェクト参加国は開発資金を拠出する一方、自国でもF35を主力戦闘機として採用するため、製造規模は合計で3000機以上に上る見通しだ。
航空自衛隊がFXに採用するのは、3種類あるF35のうちの空軍型F35A。全長15.7メートル、全幅10.7メートル、エンジン1基を装備し、パイロット1人が搭乗する単発単座機で、最大速力はマッハ1.6とされる。F35は空対空戦闘はもちろん、対地・対艦攻撃、航空偵察、電子戦など多様なミッションに対応可能なマルチロール(多用途)戦闘機として開発されている。搭載できる兵器は開発が進むにつれて増え、いずれ要撃任務(領空侵入機などを迎撃すること)だけでなく、敵上陸部隊の制圧や艦艇の攻撃などにも活用できる能力を持つ見通しだ。
F35Aは11年7月に初期量産型が米空軍に納入されたばかりで、実戦配備できるのは16年以降とされている。ただし、メーカーのロッキード・マーチン社にはステルス戦闘機F22ラプターを開発した実績がある。ステルス機については、ロシアとインドが共同でスホーイT50を開発しているほか、中国も殲20(J20)を初飛行させているが、ともに実用化のスケジュールは明確になっていない。このため、16年度から航空自衛隊がF35Aの配備を進めれば、日本の防空能力は格段に向上し、極東地域の軍事バランスにも影響を与えるのは確実だ。
新着
会員限定