三浦や西島、西田敏行ら脇を固めるベテラン勢の熱演にも心動かされるが、この作品を見ることによる最大の収穫はモトーラ世理奈という若手女優の存在を知ることだ。
現在21歳のモトーラは高校1年生でファッション雑誌「装苑」に起用されたほか、人気バンドRADWIMPSのアルバムジャケットや百貨店の広告などにも登場。背景に物語を想像せずにはいられない独特の雰囲気は、クリエーターたちの心を捉えて離さない。
出色なのはもう一つの主人公「風の電話」との〝共演シーン〟。風の電話とは、大槌町在住のガーデンデザイナーが自宅の庭に作った電話ボックスだ。電話線はつながっていないが、亡くなった人と会話をする電話として知られ、震災後、3万人以上が訪れたという。
ハルが受話器に向かい、家族への思いと生きる決意を語り掛けるクライマックス。このシーンは最後に撮られたが、2日間雨が続き、3日目にようやく撮影にこぎ着けた。せりふはすべてモトーラ自身に任されていたというが、この雨はせりふを練り上げる時間を作るための天からの贈り物だったのかもしれない。
「ハルは生きているからみんなのことを思い出せるんだよ」「いつかハルもみんなに会いに行くよ。でも、それまでは生きるよ」。こうした言葉は被災者だけでなく、日本、そして世界中の人々の心に響き渡るはずだ。
(時事通信文化特信部・宗林孝)
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