「新星発見」という収穫 諏訪敦彦監督「風の電話」

同行者の気分に

 諏訪敦彦監督の新作映画「風の電話」は、2011年3月11日に発生した東日本大震災の被災者である少女が失ったものを探し、取り戻していく物語。少女は長い旅の途中、自分と同様に故郷や家族を奪われた人々と触れ合うことで、生きる理由を学び取る。

 震災から8年。岩手県大槌町を襲った津波で家族を失い、一人生き残ったハル(モトーラ世理奈)は広島県呉市で伯母と暮らしていた。その伯母が突然、倒れたことで再び独りぼっちになったハルは、故郷へ向かうことを決意する。

 電車やヒッチハイクで大槌町に向かうロードムービー的要素が魅力的。現場で俳優に〝即興芝居〟を求めるなど諏訪監督独特のドキュメンタリー的演出もあって、観客はハルの同行者のような気分になれる。

 ハルは前年の豪雨による土石流で被害を受けた集落に住む公平(三浦友和)やシングルマザーになることを決意した友香(山本未來)、福島第1原発の元職員、森尾(西島秀俊)らと出会うが、特に心引かれるのはクルド人家族との交流シーンだ。日頃、接する機会が限られる難民との邂逅(かいこう)に唐突さを指摘する向きもあるかもしれないが、ここにも故郷を失い、そして家族と離ればなれになって暮らす人々がいることを知らせることで、物語の厚みを増すことに成功している。何より、偶然の出会いがあってこその旅だという製作側の意図も感じずにはいられない。

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