現在放映中のNHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」の前半部分の主人公として、全国的に知られるようになった金栗四三。日本における「マラソンの父」と称され、ランナーとしてだけでなく指導者としても活躍したが、著書があることはあまり知られていない。
1916(大正5)年、金栗が25歳の時に『ランニング』(菊屋出版部)が刊行された。短距離ランナー明石和衛との共著であり、長距離走の部分を金栗、短距離走の部分を明石が執筆している。このうち金栗の執筆部分が『復刻新装版 ランニング』として100年ぶりに復刊された。その一部を抜粋し、同じ長距離ランナーの視点から、女子マラソンの第一人者である増田明美さんに読み解いてもらった。
「いくら我慢ばかり強い人でも、我慢を通す相当な体格がもちろん必要である。まず体格が普通以上であれば、我慢の強い人が、成功する。同一人についても必要の度は体力四、精神力六の比例だろう。このくらいの人が練習すれば最もよいと思う。」(『復刻新装版 ランニング』より抜粋。以下同)
増田明美 短距離に比べて身体的に不利であったとしても、「体力4割、精神力6割」なのがマラソンなんです。瀬古利彦さんを育てた中村清さんも「長距離は才能が3、努力が7」と話していたのを思い出します。
短距離は体格や運動センスなどの才能が占める割合が多いと思います。でも、マラソンランナーは平均的に運動オンチが多く、子どもの頃、バスケをやってもテニスをやってもダメな女子。サッカーや野球が不得意だった男子。そして陸上部に入ったけどハードル跳べない、投げるのも苦手、じゃあとにかく走るしかない。と、長距離にくるんですよ。たまに例外もいますけどね。でも苦痛に耐える我慢力が実を結ぶのです。有森裕子さんみたいにね。
長距離は他の種目に比べて練習時間も長いし、マラソンともなると準備に半年かけることもあります。努力を継続する才能、苦しみを我慢する才能が必要です。
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