高温多湿の条件が想定される東京五輪では、競歩やマラソンなど陸上の持久系種目が気候の影響を受けそうだ。日本陸連はデータを活用し、各選手の特性に合わせた酷暑対策に着手している。
真夏のレースでは多くの水分が失われて体重が減る。日本陸連の杉田正明科学委員長(51)によると、パフォーマンスを維持するには脱水による体重減少率を競歩で3%、マラソン女子で4%、同男子で5%以内に収めるのが目安。そのためには適切な給水量を各選手が知る必要がある。
陸連科学委員会は数年前から、合宿などを利用して競歩日本代表選手のデータを採取。練習前後の体重差や給水量などを調べて各自の傾向をつかみ、給水1回につき必要な量を割り出し選手に伝えている。今年の世界選手権男子50キロで銀メダルを獲得した荒井広宙(自衛隊)の場合、歩行距離や気象条件が違っても体重減少率は常に3%以内を維持できているという。
データ採取は「泥臭く地道」(杉田委員長)。給水1回ごとにボトルをはかりに乗せ、練習前後のウエアや靴下の重さを比較し、染み込んだ汗の量も計算。汗に含まれるナトリウム濃度などから、給水で補給すべき成分を把握する取り組みも進める。同委員長は「個人差は思っている以上に大きい。どんな特徴でも対策を授けるのが僕らの仕事」と意気込む。
気温や湿度などを含めた指標「暑さ指数」で熱中症の危険度が高い30度の条件では、2時間20分のベスト記録を持つ女子マラソン選手のパフォーマンスが5%(7分に相当)下がるとされる。陸連の河野匡長距離・マラソンディレクターは「科学的知見を駆使し、それを3、4%に減らせればメダル圏内に入ってくる」と対策の意義を説く。
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