◆「力入らない」
◇2017年夏場所11日目(5月24日、東京・両国国技館)◇
横綱稀勢の里が夏場所11日目から休場した。左の上腕、胸に負傷を抱えながら、新横綱として臨んだ春場所では劇的な逆転優勝を遂げたものの、けがは完治しておらず、夏場所は10日目まで6勝4敗。「力が入らない」。そう申し出て、初土俵から15年で1日しか休んでいなかった稀勢の里が、苦渋の決断を下した。
春場所後の巡業は全休。四股やすり足、ウオーキングで徹底的に下半身を鍛えたが、関係者によると、てっぽうは打てなかったという。思うように回復が進まない中で臨んだ夏場所では最大の武器である左からのおっつけは影を潜めたまま。連敗した栃煌山、琴奨菊戦は相撲にならなかった。
初優勝を遂げた初場所後に日本出身としては19年ぶりに横綱に昇進すると、春、夏場所の前売り券は発売初日に完売した。大きな注目を集める中、苦戦を承知で出場した心意気は責められない。
横綱は優勝争いに加わることが求められる立場で角界の看板、宝でもある。だからこそけがを治し、再び勇姿を見せなくてはならない。八角理事長(元横綱北勝海)は「力を出せる精神状態へ自分をコントロールしないといけない」と述べ、傷ついた稀勢の里の心中を察しつつ、奮起を促した。(運動部)
(2017.5.24配信)
新着
会員限定