稀勢の里 苦闘の日々

先代への思い胸に

◆優勝争い誓う

 稀勢の里は九州場所初日の1週間前となる11月4日、張り詰めた空気が漂う福岡市西区の阿武松部屋宿舎に出向いた。ぶつかり稽古で阿武松親方(元関脇益荒雄)が弟子の阿武咲に檄(げき)を飛ばすと、横綱も呼応するように「調子良いうちにやろう」「最後ぐらい気合入れろ」と言いながら胸を出した。
 場所前の出稽古では、たびたび阿武松部屋へ足を運ぶ。進退を懸けた先場所前には、何かを思い出したかのように「やっぱり師匠が厳しいと違うな」と漏らしたという。
 先代の師匠、故鳴戸親方(元横綱隆の里)は稽古で妥協を許さない人だった。7年前に亡くなった直後に大関となった稀勢の里にとって、阿武松部屋はかつてを思い起こし、自らを奮い立たせることができる場所の一つになっている。
 二所ノ関一門連合稽古では、苦手な逸ノ城を指名。新横綱だった昨年春場所で負傷してからは、あまり使えていなかった左で、はず押しやおっつけを効かせて先手を取った。この時も稽古を見守った阿武松親方は「先場所よりも左を使えているし、相撲のバランスも良くなった」と評した。
 先場所は9場所ぶりに皆勤し、10勝を挙げて引退危機をひとまず回避。今場所を見据えては「優勝争いは最低条件」と言い切った。7日に命日を迎えた先代師匠に向けた誓いの宣言にも聞こえた。(運動部)(2018.11.8配信)

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