稀勢の里 苦闘の日々

「左頼み」露呈、厳しい連敗

 ◆差し負けて金星配給

 大相撲九州場所2日目(12日、福岡国際センター)、稀勢の里が前頭の妙義龍に敗れ、初日に続いて連敗した。14個目の金星配給もさることながら、横綱1人の場所で最悪のスタート。進退を懸けた秋場所を切り抜けた稀勢の里に、また試練が訪れた。
 妙義龍戦は過去16勝4敗だが、顔が合うのは2016年秋場所以来。久々に対戦するとあって稀勢の里は場所前、境川部屋へ出稽古して妙義龍を稽古相手に指名し、15番取った。過去の本場所の対戦と同じように、稀勢の里が圧倒しながらも差し手争い次第では妙義龍に勝機もあった。
 その通りの展開。妙義龍は当たって左をのぞかせ、頭を下げて稀勢の里の左差しを嫌った。稀勢の里が何とか左をのぞかせたが、妙義龍は素早く巻き替えてもろ差しに成功する。
 棒立ちで防戦一方の稀勢の里は、我慢できず左で小手投げを打つ。「あれで結構みんな土俵際でつぶされたり、突き落とされたりしてるんで」と妙義龍。久しぶりの結びで緊張しながらも、稀勢の里の捨て身の「左」は織り込み済みだった。腰を下ろし、体を離さずに寄ると、稀勢の里は崩れるように土俵下へ落ちていった。

 ◆「黄金」ではない「左」
 稀勢の里は左四つだが、右上手でなく左で相撲を取る。10月に亡くなった輪島さんもそうだった。だが、輪島さんは左下手を取るのが早く、右の強烈な絞りとおっつけで相手の重心を浮かせておいて、左からの強烈な下手投げで仕留めた。いわゆる「黄金の左」。腰が低く下半身も安定していた。一緒にしては、昭和の名横綱に失礼というものだろう。
 場所前から好調が伝えられ、復活優勝の声も上がった稀勢の里だが、初日の貴景勝戦は低くて動き回る相手に対する不安が出た。この日は分のいい相手に、頼みの左差しを果たせず完敗。八角理事長(元横綱北勝海)が「辛抱負けしたね」と見たように、横綱1人の重圧があるとはいえ、弱点を突かれた連敗に、秋場所とは別の厳しさがうかがえる。
 引退の危機を切り抜けたことで、対戦相手は遠慮なしに研究し、ぶつかってくる。場所前の稽古で、最初の1番は妙義龍が勝っていた。「稽古場でも最初の相撲が大事。相手が疲れてきたところで何番勝っても仕方がない。本場所は1番しかないんだから」とは八角理事長。
 先場所の序盤を思えば、心身の状態はずっと良いはずだが、結果がそうならないのが勝負の厳しさ。3日目の相手、北勝富士はこの2日間、豪栄道と高安に善戦して体が動いている。支度部屋で無言を貫いた稀勢の里。自分だけのピンチだった先場所とは違うものを背負った苦しさが、険しい顔に浮かんだ。(時事通信社・若林哲治)(2018.11.12配信)

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