◆14の部屋が勧誘
湘南乃海は15歳にして192センチだった。相撲は未経験ながら小学3年から始めた野球で鍛えた体に素質を見込まれ、14もの部屋から熱心な勧誘を受けた。
中学を卒業後、「部屋の雰囲気の良さと稽古の厳しさ」から高田川部屋に入門。高田川親方(元関脇安芸乃島)の「今は日本人力士が活躍していないから、君がヒーローになれ」という率直な言葉が決め手だった。
2014年春場所に初土俵。5場所で三段目まで上がったが、その後1年余り序二段との往復を繰り返した。「弱いのは当たり前。今は我慢の時」と自分に言い聞かせ、四股やすり足といった相撲の基本に取り組む姿勢から見直した。
やみくもに食べていた食事の取り方も改善。糖尿病の発症を恐れるあまり食事の量を控えていたところ「いっぱい食って稽古をすれば大丈夫」と師匠に諭され、野菜から先に食べるようにするなど気を使うようになった。一時130キロまで落ちた体重が再び増量。稽古場で歯が立たなかった三段目や序二段の兄弟子にも勝てるようになり、「自信が付いて場所でも思い切りいけるようになった」。西三段目75枚目で臨んだ昨年初場所は4勝3敗とし、初めて三段目で勝ち越した。
◆浮かれず課題も自覚
自己最高位の西幕下48枚目だった今年の初場所3日目。元横綱琴桜の孫、琴鎌谷と顔を合わせた。けんか四つの相手に左を差し勝った。自分とは対照的な角界のサラブレッドを破り、「自分の四つで攻めて、上手も取れたのはよかった」。この場所は4勝3敗で取り終え、8場所連続の勝ち越しとなった。ただ、一場所を通して見ると、足を前に運べず、いなしながら劣勢を挽回しようとする内容もあり「相手の圧力を利用してはたいてしまっている。課題がいっぱいある」。長い腕を生かし、突っ張って相手を起こしてから左を差す理想の攻めに磨きを掛けようとしている。
4月で19歳。高田川親方との「18歳で関取」という約束を果たすのは難しそうだが、「今年中には十両に上がりたい」。新たに定めた目標に向かい、一歩ずつ着実に前進している。
◆湘南乃海(しょうなんのうみ) 1998年4月8日生まれ、本名・谷松将人。神奈川県大磯町出身、高田川部屋。2014年春場所初土俵、最高位は西幕下48枚目。192センチ、158キロ。
◇関取 十両以上の力士のこと。本人に話し掛ける時は「関取」か「○○関」。ただし横綱・大関を「関取」と呼んでは失礼で、「横綱」「大関」か「○○関」と呼ぶ。十両以上の力士をまとめて言うときは、横綱・大関が含まれていても「関取衆」と称してよい。幕下以下は「取的(とりてき)」「若い衆」などと呼ばれ、本人に対しては「関」を付けず「○○さん」、四股名が分からないときは「お相撲さん」。
(データなどは2017年初場所終了後現在)
(時事通信運動部相撲担当・大野周)
新着
会員限定