大相撲 新星探査

貴源治 関取衆も注目、19歳の大器

 ◆むき出しの負けん気
 伸び盛りの19歳、貴源治には関取衆も注目している。そっくりな双子力士の弟として話題に上ってきたが、実力も伴ってきた。初場所は最高位の西幕下4枚目で5勝2敗。関取まであと一歩の位置へ来た。
 均整が取れ、恵まれた体格からの強烈な押し相撲が基本。懐が深く、四つ相撲も器用にこなす。昨年の秋巡業。35歳の十両・里山は意識して貴源治と稽古した。次の九州場所の成績次第では十両から転落する危機にあったベテランは、「一番、勢いのある相手を肌で感じたかった」という。
 初場所では、元関脇でけがのため幕下から復活を目指す豊ノ島が貴源治と対戦。「相手が誰でもびびらない気持ちが伝わってくる。日本人は露骨に負けん気を出してくる子がいない中で、貴源治は出してくる」と感心していた。
 兄の貴公俊とともに中学卒業後に角界入りしたたたき上げ。中学時代は2人ともバスケットボールで活躍した。入門の話が来た時は、「もう少しバスケを続けたい思いもあったけど、腹をくくって」貴乃花部屋に入った。
 ◆分かり始めたこと
 師匠の貴乃花親方は厳しい。貴源治は反発し、指導を聞き流していた時もあったが、「ある時期から稽古場の教えを全部、素直に聞いてやるようにしてみた。そうしたら成績が残せるようになった」。巡業では、巡業部長として土俵下から目を光らせる師匠の前で積極的に十両の胸を借りる。「巡業で稽古しない人が多いけど、結果に出ることに気付いていない。みんなライバルだから言うつもりもないけど」。汗が白星につながる面白さが、分かってきた。
 1歳上の20歳、貴景勝の存在も負けん気をかき立てる。入門は自分が先だったが、出世では追い抜かれた。貴景勝が昨年九州場所で十両優勝して新入幕を確実にした時は、付け人を務めながら、「うれしいけれど先に行ってしまうのは複雑」と正直な気持ちも漏らした。ただ、このくらいで焦りはしない。「厳しいことを言われる地位だけど、ここを壁と思うか、通過点と思うかで変わってくる」。大器が意識するのは目先の地位より、その先に広がる世界だ。

 ◆貴源治(たかげんじ) 1997年5月13日生まれ、本名・上山賢。栃木県小山市出身、貴乃花部屋。2013年春場所初土俵、最高位・西幕下4枚目。188センチ、134キロ。

 ◇双子力士 貴源治と貴公俊のほかに現役では藤の海と藤の花(出羽海部屋)、大国旭と大国里(追手風部屋)、安芸乃山と安芸乃川(高田川部屋)が双子力士。
 (データなどは2017年初場所終了後現在)
 (時事通信元運動部相撲担当・藤井隆宏=現札幌支社編集部)

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