大相撲 新星探査

中園 スポット浴びて暴れたい

 ◆師匠の目の前で快勝
 夏場所12日目。東幕下29枚目で4勝1敗としていた中園は、初めて十両土俵入り後に相撲を取る機会を得た。十両力士が土俵入りを終え、化粧回しから締め込みに替えて登場するまでの間、幕下上位の力士の取組が行われる。土俵上の照明が明るくなり、観客も増えてくる。土俵に集まる視線や館内の空気が一変し、初めて相撲と出会った中学3年生の秋を思い出した。
 後に師匠となる松ケ根親方(現二所ノ関親方、元大関若嶋津)の知人に連れて来られた九州場所。当時はバスケットボール部に所属していたが、「大勢に注目される中での激しい力と力のぶつかり合い」が鮮烈だった。すぐさま相撲に魅了され、角界入りを決意したという。
 くしくもこの取組で審判をしていたのは二所ノ関親方。恥ずかしい相撲を取るわけにはいかない。自分より60キロ以上も重い徳真鵬を相手に、ひるまず真っ向勝負を挑んだ。体重の乗った突きを下半身でぐっとこらえ、もろ差しを果たして寄る爽快な取り口。「止まったら駄目だと思って前に出た。師匠の見ている前で勝ててうれしかった」と白星の余韻に浸った。

 ◆横綱の間近で学ぶ
 成長に不可欠な向上心も強い。二所ノ関一門には横綱稀勢の里のいる田子ノ浦部屋があり、中園は借り出されて横綱の付け人を務めている。「自分と同じ中卒たたき上げだし、場所中の集中力の高め方や、場所への姿勢がすごい。そういう部分を学びたい」と尊敬の念を深め、身近に接することで得るものも多いようだ。
 体格の不利を覆すため、砂袋を持ってのスクワットやすり足、ジム通いで足腰を徹底的にいじめ抜く毎日。その際、必ず春場所の三段目優勝を懸けた一番で敗れた時の動画を見て、自ら闘志をかきたてる。「あの悔しさが忘れられないから」。強靱な下半身とともに、踏み込みの鋭さや持ち味のもろ差しに磨きが掛かっている。
 三段目優勝を逃した悔しさをバネにさらに力を付け、幕下に上がった夏場所でも春場所に続いて6勝1敗の好成績。初土俵の2012年春場所から5年が過ぎ、決してスピード出世とは言えないが、ここへ来て頭角を現わし始めた。
 趣味はテレビでバラエティーや漫才などお笑い番組を見ること。相撲に対してはストイックだが、本当は「笑うのが好き」だという好漢だ。

 ◆中園(なかぞの) 1996年5月18日生まれ、本名・中園空(なかぞの・そら)。鹿児島県西之表市出身。二所ノ関部屋。2012年春場所初土俵。最高位は東幕下29枚目。175センチ、145キロ。

 ◇もろ差し 左右とも相手の腕の下に自分の腕を差す体勢を「もろ差し」「二本差し」という。どちらかの腕から順に差したり、下から一度に二本差したりと、その人によってもろ差しを果たす手順が違う。比較的小柄な力士が、相手の懐に入って有利な体勢に持ち込むために狙うことが多い。鹿児島県出身では昭和30~40年代に活躍した鶴ケ嶺が「もろ差し名人」とうたわれ、その息子の逆鉾も得意としていた。
 (データなどは2017年夏場所終了時)
 (時事通信運動部相撲担当・木瀬大路)

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