大相撲 新星探査

水戸龍 体格十分、照ノ富士らに追い付け

 ◆照ノ富士、逸ノ城と来日
 2010年、水戸龍は照ノ富士、逸ノ城と同じ飛行機に乗ってモンゴルから来日した。3人とも鳥取常北高からスタートし、水戸龍だけが卒業後に日大へ進学。回り道したとはいえ、才能の片鱗はところどころで現れた。
 15年に全日本選手権を制し、史上初の外国出身のアマチュア横綱に輝くと、16年には全国学生選手権で制して学生横綱に。錦戸部屋入門前から身長187センチ、体重180キロ以上あり、組めば腰が重く、体重の乗った突き押しは強烈だった。
 ただプロの世界は甘くない。幕下15枚目格付け出しでデビューした今年の夏場所。十両入りを目指し意気盛んな幕下力士たちに遅れを取って3勝4敗。幕下付け出し力士が初土俵で皆勤して負け越すのは10年ぶりという屈辱。「自分の体が軽いよう。勉強になった」と力の差を痛感した。
 照ノ富士と逸ノ城は既に幕内で争うほどの存在になっており、照ノ富士は優勝経験すらある。「すごい距離を置かれたから、自分も頑張らないと。あの舞台に立ちたい」。肩を並べて競える日を夢見て稽古に励んでいる。

 ◆敵は腰痛と緊張
 日大2年時に腰を痛め、腰椎分離症と診断された。以来、腰には不安を抱えたままだという。「何年も付き合っているけど、なかなか良くならない。もっと大きなけがをするんじゃないかという怖さもある」と胸の内を明かした。
 現在は体重を落とすことで負担を減らそうと食生活の改善などに取り組んでいる。それでも、「暑いとおなかがすいて食べ過ぎちゃう」。食欲も力士の才能のひとつ。猛暑で食が細くなる関取もいる夏に頼もしいが、今は悩みの種となりそうだ。
 内なる敵はもう一つ。笑顔の似合う明るい人柄だが、かなりの上がり性。「やろうと思ったことが、真っ白になっていつも忘れる。がちがちになる」と毎回余分な力が入ってしまっている様子。名古屋場所7日目に演じた1分30秒超の熱戦で、疲労も相まってようやく「少し薄まった」程度だという。
 ただ、持ち前の体格を生かした前に出る相撲を磨いていけば、好結果を残せるはず。「力が出せるように勉強。ただ勉強です」。化ける日が待ち遠しい。

 ◆水戸龍(みとりゅう) 1994年4月25日生まれ、本名・トゥルボルド・バーサンスレン。モンゴル・ウランバートル出身。錦戸部屋。2017年夏場所初土俵。最高位は幕下15枚目格付け出し。187センチ、185キロ。

 ◇エビスコ 相撲界の隠語で食欲のこと。大食漢のことを「エビスコが強い」、たくさん食べることを「エビスコを決める」などと言う。えびす講の集まりでたらふく食べる風習があったこと、満腹のおなかがエビス様のように見えることなどが語源とされる。
 巨漢ぞろいの角界は大食のエピソードには事欠かない。千賀ノ浦親方(元小結隆三杉)は現役時代、焼肉75人前を平らげたという。元横綱の北の湖、柏戸、双羽黒らも豪快な食べっぷりで有名だった。後に解説者としても活躍した元小結若瀬川は親方時代、うな重を毎食3人前ずつ1週間食べ続け、高血糖で入院したという。食べ過ぎは禁物だ。
 (データなどは2017年名古屋場所8日目現在)
 (時事通信運動部相撲担当・木瀬大路)

新着

会員限定

ページの先頭へ
時事通信の商品・サービス ラインナップ