大相撲 新星探査

若隆景 夢は「関取3兄弟」

 ◆しこ名の由来は「三本の矢」

 若隆景は長兄の若隆元、次兄の若元春とともに荒汐部屋に所属する「大波(本名)3兄弟」の末弟だ。夢は3兄弟全員で関取になること。長い大相撲の歴史でも、井筒3兄弟(元十両鶴嶺山、元関脇逆鉾、元関脇寺尾)の1例しかない。難しい挑戦だが、「兄弟の中で一番早く、という気持ちもある」と話し、自分が先んじて、幕下にとどまっている兄2人に続いてほしいとの思いは強い。
 しこ名は戦国大名の毛利元就の三男で、後に豊臣政権の五大老に出世した小早川隆景から付けられた。兄2人も隆景の2人の兄、毛利隆元と吉川元春からとって今年夏場所に改名。「毛利3兄弟」の結束を例えた逸話として知られる三本の矢にちなみ、師匠の荒汐親方(元小結大豊)が考えたもので「3人で切磋琢磨(せっさたくま)してほしいとの意味がこもっている」という。

 ◆迷ったプロ入り

 祖父は1950年代に活躍した元小結若葉山、父は元幕下の若信夫。高校を経て入門した2人の兄とは異なり、相撲一家の中で唯一大学に進んだ。「プロに行ける体ではなかった」。進学先の東洋大で30キロ増やしても110キロ余り。実業団からの勧誘もあり、就職か角界入りかで悩んだ。大相撲を目指す決め手になったのは大学4年の昨年11月、全国学生選手権個人戦で準優勝を果たし、三段目最下位格付け出しの資格を得たから。相撲部屋生活は「大学の相撲部とは全然違うので新鮮な感じ」と言うが、若隆元からあいさつの仕方やしきたりを教わるなどして順応。春場所の初土俵から4場所連続で勝ち越し、「ここまでは上出来過ぎなくらい」と思っている。
 自己最高位の東幕下16枚目まで進んだ9月の秋場所は、3連敗から盛り返し、7番相撲で勝ち越した。関取経験者がひしめく地位になり、前まわしを引いて前に出る得意の形に持ち込むのが難しくなった。「立ち後れずに自分から攻める相撲を取りたい。とりあえず、11月の九州場所も勝ち越したい」。まずは若元春の最高位である西幕下5枚目を上回るのが目下の目標だ。

 ◆若隆景(わかたかかげ) 1994年12月6日生まれ、本名・大波渥(おおなみ・あつし)、福島県出身、荒汐部屋。2017年春場所初土俵。180センチ、118キロ。

 ◇井筒3兄弟 もろ差し名人とうたわれた元関脇鶴ケ嶺の長男・鶴嶺山、次男・逆鉾、三男・寺尾のこと。鶴嶺山と逆鉾が1981年名古屋場所で同時に十両へ昇進し、寺尾も84年名古屋場所で十両になって3兄弟関取を果たした。ただ、鶴嶺山はけがに泣いて幕下に戻っており、3人同時関取はついに実現しなかった。逆鉾と寺尾はともに関脇まで昇進。兄弟で同時三賞受賞や同時関脇の快挙も遂げている。
(データなどは2017年秋場所終了時)
(時事通信運動部相撲担当・大野周)

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