◆意識が変わった
「竜虎」と書いて「りゅうこう」と読む。オールドファンは往年の人気力士「龍虎」を継いだと思うかもしれないが、実は本名からとった四股名。龍虎は二所ノ関一門の花籠部屋の力士で、こちらは出羽海一門の尾上部屋で修行中のホープだ。
名古屋場所は西幕下41枚目で1番相撲から4連勝で勝ち越し。5番相撲は優勝を意識して「体が硬くなってしまって」つまずいたが、「1日1番」と思い直し、6勝1敗で終えた。5勝目は翠富士を、6勝目は武将山を、突いてから肩透かしなどでタイミング良く仕留めている。
尾上親方(元小結浜ノ洲)のおいで、同じ熊本県宇土市出身。小学校へ上がる前から相撲を始め、正代と同じ相撲クラブで胸を借りていたという。中学横綱の実績もあり、高校卒業を前にした2017年初場所で初土俵を踏んだ。
均整の取れた筋肉質の体で、春場所は自己最高位の西幕下17枚目まで上がったが、3勝4敗。夏場所も東幕下26枚目で2勝5敗と、幕下の壁に跳ね返された。「それまでは、はたいりして小手先だけで勝っていた。やっぱり前に出る圧力をつけなければ。意識が変わりました」という。
幕下上位は体の大きい力士や、くせ者も多い。前に出る力をつけるのは基本の中の基本だが、番付を上げるには、その力を高めないと攻め込めない。当面、目指すのは「突き切れれば一番いいけど、できなければ前まわしを取っておがんで出る相撲」。部屋では里山、天鎧鵬の両幕内経験者らと「とにかく前に出ることを考えて」稽古を積んでいる。
◆食べることも稽古
食が細いのも悩みで、体重は入門当時から4キロほど増えただけ。ご飯どんぶり4杯をノルマに、夜食もとるなどして努力中だ。
師匠は「勘はいいと思う。それは武器だが、稽古のやり方などを自分でしっかり考えて、力をつけないと。跳ね返されながら分かっていくと思う。食べる方も少しずつ努力していけば」と見守る。
新弟子検査の時、「2年で関取になりたい」と最初の目標を口にした。「2年」の数字に厳密な意味はないが、「じっちゃん(祖父)が病気なんで、早く化粧まわし姿を見せてあげたい。去年、ばあちゃんが亡くなって、間に合わなかったから」と、期するものがある。今年の九州場所でまる2年。「地元で(十両昇進を)決めたいです」。いったん遠のいた目標が、またはっきり見えてきた。
「海まで自転車で5分」の家で育ち、釣りが好きだというが、それは関取になって自分の時間ができるまでお預けだ。
◆竜虎(りゅうこう) 1998年6月23日生まれ、本名川上竜虎(かわかみ・りゅうこう)。熊本県出身、尾上部屋。180センチ、130キロ。宇土鶴城中時代に中学横綱。文徳高を経て2017年初場所初土俵。最高位は西幕下17枚目。
◇龍虎(りゅうこ) 北の富士さんと同じ1957年初場所初土俵。68年春場所で新入幕を果たし、75年夏場所まで現役を務めた。幕内在位35場所、最高位は小結。江戸っ子らしくきっぷのいい美男力士として人気があった。アキレス腱断裂で幕下まで転落して再入幕を果たしたことも。引退後間もなく芸能界に転じ、料理番組や時代劇で活躍したが、2014年に73歳で亡くなった。
(データなどは2018年名古屋場所終了時点)
(時事通信社・若林哲治)
新着
会員限定