大相撲 新星探査

琴鎌谷 右四つ磨く「猛牛」横綱の孫

 ◆吹っ切れて勝ち越し

 元横綱大鵬の孫の納谷(大嶽部屋)が注目を集めているが、佐渡ケ嶽部屋にも元横綱の孫がいる。佐田の山、北の富士らと同時期に活躍し、「猛牛」と呼ばれた琴桜(故先代佐渡ケ嶽親方)の孫、琴鎌谷だ。186センチ、155キロの恵まれた体格で右四つを得意とする20歳。一度は幕下の壁に跳ね返されたが、秋場所まで4場所連続勝ち越しと、十両昇進に向けて着実に歩みを進めている。
 埼玉栄高では主将として高校総体で団体優勝。琴桜の娘婿で、父親である佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)の下に入門し、2016年初場所では序ノ口で全勝優勝を飾るなど5場所連続勝ち越し。順調に番付を上げたが、幕下で2場所連続の負け越しを喫し、三段目に落ちた。
 1場所で幕下に戻ると再び番付を上げ、東幕下15枚目の秋場所は、連敗スタートとなって「焦りはあったけど吹っ切れた」。積極的に攻める相撲で4連勝。7番相撲は敗れたが、4勝3敗で4場所連続勝ち越しを果たした。九州場所は十両が見える東幕下9枚目で臨む。

 ◆立ち合いの厳しさを

 関取経験者も多い幕下上位は、一筋縄ではいかない相手ばかり。その中で勝ち越しを続けている要因として、意識の変化を挙げる。「相手や勝ち負けよりも、自分の取りたい相撲を意識している」。秋場所では、もろ差しを許しても落ち着いて相手を引きつけ、冷静に巻き替える場面もあった。佐渡ケ嶽親方は「稽古を休まないでやっていることが一番」と見守る。
 土俵際で勝ちを焦って膝が伸びてしまう癖があるが、「自分が我慢すれば抜ける」と意識して克服に取り組んでいる。圧力のある幕下上位との対戦を経験したことで、「どれだけ立ち合いで前に出られるか」も課題だ。佐渡ケ嶽親方も「立ち合いの厳しさがまだまだ足りない。もっと下半身を強化しないと」と指摘する。
 高校の2年後輩で同部屋の琴手計(ことてばかり)が、秋場所で幕下に上がってきたことも刺激になっている。関取衆や兄弟子たちの相撲を見る時、タイプの違う突き押しの力士にも目を凝らす。「見習えるところは全て吸収したい」と貪欲だ。
 祖父や師匠である父の存在もあって期待は大きいが、「考えても一緒なので意識しない」と言い切る。目標は一場所でも早く十両に昇進することだが、「目の前の相撲に集中したい」と、一番一番の積み重ねを肝に銘じている。

 ◆琴鎌谷(ことかまたに) 1997年11月19日生まれ、本名鎌谷将且(かまたに・まさかつ)、千葉県松戸市出身、佐渡ケ嶽部屋。高校相撲の強豪、埼玉栄高から2015年九州場所初土俵。186センチ、155キロ。自己最高位は東幕下9枚目。
(記録などは2018年九州場所番付発表時点)
(時事通信社運動部・前田祐貴)

 ◇琴桜(ことざくら) 本名鎌谷紀雄、鳥取県倉吉市出身。高校3年の1959年初場所初土俵。強烈なぶちかまし、のど輪、突き押しで「猛牛」の異名を取った。大関在位が5年に達して限界もささやかれた72年九州場所、翌年初場所で連続優勝し、32歳で横綱に昇進した。2場所目に優勝して面目を施したが、在位8場所で引退。佐渡ケ部屋を継いでからは大関琴風らを育て、定年退職後には琴欧洲、琴光喜、琴奨菊も大関に昇進している。2007年8月、66歳で死去。

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