◆粗削りも魅力の突き押し
九州場所で初めて幕下に上がった塚原は、積極的に前に出る相撲で5勝2敗の好成績を挙げた。「攻める気持ちを忘れずに取ろうと思っていた。5番勝てて自信になる」と振り返る。身長191センチ、145キロの恵まれた体格で突き、押しが武器だ。10月に19歳になった。元横綱大鵬の孫の納谷(大嶽部屋)、元横綱朝青龍のおい豊昇龍(立浪)、琴手計(佐渡ケ嶽)ら同学年で注目の力士は多いが、元中学生横綱の塚原も負けていない。
将来性は誰もが認めるところ。埼玉栄高から春日野部屋に入門。昨年の九州場所で初土俵を踏んでから1年で幕下まで昇進した。部屋付きの岩友親方(元幕内木村山)は「体が大きくて頭からも当たれるし、突っ張りもできる。懐も深いし、相当な魅力がある」と期待する。ただ粗削りな面もあり「まだまだ。体も硬いし、腰も高い。直すところはたくさんあるけど、それはすごくプラス」と同親方。課題が多い分、今後の伸びしろも大きい。
今年は一つの壁も乗り越えた。序ノ口、序二段で連続優勝したが三段目に上がると苦戦。勝ち星を欲しがるあまり安易な引き技に走って墓穴を掘る場面が目立った。名古屋場所では3勝4敗と初の負け越し。場所前の稽古でも精彩を欠いていたといい、「勝ちたい意識が強過ぎて、足が出ていなかった」と当時を振り返る。
◆栃煌山の姿勢に学ぶ
だが、この負け越しで「勝つことより自分の相撲を取ること」と意識が変わった。弱点の腰高を克服すべく、稽古場では四股やすり足に加え、約30キロの石を抱えてのトレーニングで下半身を強化。食事も増やして、体が4、5キロほど大きくなり「簡単に押されなくなった」と力もついた。心身共に進歩があり、秋場所は6勝1敗。その前の2場所とは見違える内容だった。
秋場所から栃煌山の付け人になったことも大きい。兄弟子は相撲に対して人一倍、真摯(しんし)に努力するタイプ。場所入り後も出番まで入念な準備を怠らない。「意識の高さが違う。勉強させてもらっています」。気持ちのつくり方など多くを学び、自身の相撲にも生かしている。
初場所は、さらに番付を上げ、相手も強くなるが「引かない相撲、攻める相撲を貫きたい」とノンストップで上を目指すつもり。「同級生に埋もれてしまっているので」と塚原は笑うが、世代の顔になるだけの力は秘めている。
◆塚原(つかはら) 1999年10月12日生まれ、本名塚原隆明(つかはら・たかあき)、埼玉県出身、春日野部屋。埼玉栄高から2017年九州場所初土俵。191センチ、145キロ。最高位は今年九州場所の東幕下57枚目。埼玉・黒須中3年で全国中学校相撲選手権の団体、個人で優勝。
(記録などは2018年九州場所終了現在)
(時事通信社運動部相撲担当・酒谷 裕)
◇中学生横綱 1971年に始まった全国中学校相撲選手権の個人優勝者に贈られる称号。これまで後藤哲雄(のち関脇栃司、現入間川親方)から塚原まで19人が大相撲に入り、竹内雅人(雅山)、菊次一弘(琴奨菊)が大関になった。九州場所で初優勝した貴景勝も2011年の中学生横綱。高校横綱も獲得したのは4人で、うち1人はのち幕内になった市原孝行(清瀬海)。4人とも学生横綱にはならなかったが、加藤耕市と市原はアマチュア横綱になった。
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