◆逸材ぞろいの学年で高校横綱
ようやくざんばら髪から卒業して迎える秋場所。狼雅は「簡単には洗えないので、今は本当に大変」と言い、少し照れくさそうに笑う。ちょんまげを結って、184センチの引き締まった体がより力強く見える。
2018年九州場所の初土俵から序ノ口、序二段で全勝優勝を果たした。右四つからの力強い寄りを武器に、三段目と幕下でも5勝2敗と勝ち越し、着々と番付を上げてきた。
モンゴルから鳥取城北高に相撲留学し、17年には外国出身で初めて高校横綱の栄誉をつかんだ好素材。同学年は粒ぞろいで、元横綱朝青龍のおいの豊昇龍や、元横綱大鵬の孫の納谷らがいる。「本場所でもよく話すし、みんな仲がいい」。切磋琢磨(せっさたくま)して、ともに高め合いたいと考えている。
だが、番付では仲間を追う立場。ビザが取得できず、デビューが彼らよりも約1年遅れた。悶々(もんもん)とした日々を過ごしながら、「慌ててしまうと駄目」と自分に言い聞かせ、「しっかり自分の体をつくっていた」。地道な基礎運動を続け、下半身はぐっと引き締まった。
◆プロで味わう相撲の難しさ
来日前は柔道やモンゴル相撲、レスリングなどさまざまな格闘技を経験した。月ごとに異なる競技の大会に出ることもあったが、「技が似ているから全然大丈夫」と問題にしなかった。そんな器用な狼雅であっても、「相撲は一番難しい」と悩む。力士の桁違いの腕力もそうだが、立ち合いから瞬時の判断が求められる難しさを痛感している。
師匠の二子山親方(元大関雅山)は「相手の攻めを受けてしまう悪い癖がある」と指摘する。引き出しの多さは迷いも生む。7月の名古屋場所では大関経験者の照ノ富士との一番で、立ち合いにまごついた。春場所で土をつけた相手に一方的にきめ出され、親方をひどく落胆させた。
課題を克服すべく、秋場所の番付発表前から出稽古を重ねた。距離のある浅香山部屋を訪れるため、朝4時に起床することもあった。「早くみんなに追い付かないと」。自分から攻める形を確立しようと必死に取り組んでいる。
秋場所は西幕下43枚目。まずは十両が見えるところまで行きたい。関取誕生となれば、二子山親方が昨年4月に独立してから初めてとなるが、親方はそれまでにはまだまだ壁が現れると予期する。「幕下でも上位は一癖も二癖もある。稽古場でやっていることを本場所でも出せるかどうか」。厳しい稽古は、まだまだ続く。
◆狼雅(ろうが) 1999年3月2日生まれ、本名アマルトゥブシン・アマルサナー、モンゴル出身、二子山部屋。鳥取城北高から2018年九州場所初土俵。184センチ、137キロ。最高位は今場所の西幕下43枚目。17年高校総体個人決勝で豊昇龍を破って外国出身で初の高校横綱になった。
(記録などは2019年名古屋場所終了現在)
(時事通信相撲担当・木村正史)
◇二子山部屋 2018年に元大関雅山が埼玉県所沢市に開いた。現在、力士は9人所属している。よく知られる二子山部屋は1962年、元横綱初代若乃花が東京・阿佐ケ谷に興し、激しい稽古で横綱2代目若乃花、隆の里、初代貴ノ花、若嶋津の2横綱2大関をはじめ多くの関取が育った。師匠の定年に伴い、元大関初代貴ノ花が開いていた藤島部屋と合併し、藤島親方が二子山を継承。新二子山部屋は若貴兄弟、貴ノ浪、安芸乃島らを擁する一大勢力となり、やがて貴乃花親方が継いで貴乃花部屋になった。現在の二子山部屋とは一門も別で、つながりはない。
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