大相撲 新星探査

栃神山 強気と向上心で快進撃

 ◆アマ時代から活躍

 今年初場所で初土俵を踏んだばかりの18歳、栃神山が破竹の勢いを見せている。春場所に序ノ口で6勝1敗の成績を残すと夏場所は序二段優勝。名古屋場所も三段目で6勝1敗の成績を収めた。9月の秋場所は西幕下54枚目で5勝2敗。初めて幕下で戦った感想を聞かれても「三段目とあまり変わらない。部屋で強い相手と稽古しているので」と強気に話す。
 アマチュア時代から実績を残してきた。小学1年の頃に北勝富士や兄弟子の塚原が輩出した埼玉・入間少年相撲クラブで相撲を始めると、小学4年になる頃には県内では負けることはないほどの実力に。黒須中時代には「しょっちゅう吐いていた」というほど食べて、中学入学時に110キロそこそこだった体重を中学3年の春までに135キロに増やし、3年夏には中学横綱になった。埼玉栄高校時代も3年時に国体少年個人準優勝を果たしている。
 国体を終えると大相撲入りを決意。入間少年相撲クラブ時代からの恩師である西沢正夫さんが春日野親方(元関脇栃乃和歌)と明大相撲部で同期だった縁もあり春日野部屋に入門した。「中学、高校の時はほとんど負けることがなかった」と語るほどの実績を残してきた逸材だが「アマ時代に教わったことはいったん忘れて一から」という気持ちで入門したと話す。

 ◆栃ノ心から学ぶ

 アマチュア時代から順風満帆に見えるが、けがもあった。高校時代には肘や足首などを負傷。半年近く相撲が取れない時期もあった。左肘には今でも痛みが出るため、サポーターをしながら相撲を取っている。部屋付きの岩友親方(元幕内木村山)は「けがとどう向き合ったか、どう乗り越えたか学んでほしい」と右膝と左肩にけがを抱えながら戦う栃ノ心から相撲に取り組む姿勢を学ぶことを期待している。
 こうした親方の考えもあり、栃ノ心の付け人を務める栃神山。秋場所は栃ノ心がかど番だっただけに「自分はどうでもいい。大関に残ってほしい」と自らの勝敗よりも兄弟子の相撲を気にする姿も見せていた。
 3人の関取と自身を含め16人の幕下以下の力士がいる春日野部屋。さまざまなタイプの力士と稽古して、多くのことを吸収している。押しを得意とするが秋場所ではまわしを取りに行く相撲にも取り組んでいて、4連勝で勝ち越しを決めた7日目の中園との一番でも左でまわしを取る相撲を見せた。
  九州場所は西幕下37枚目まで上がった。まわしを取る相撲にも取り組んでいるが「上でやっていくには押す力が必要になる」と得意の押しの強化も忘れない。栃ノ心に近づくことを目標とするホープはさらなる成長を誓った。
 ◇栃神山(とちかみやま) 2001年1月11日生まれ、本名神山龍一(かみやま・りゅういち)、 埼玉県出身、春日野部屋。179センチ、152キロ。埼玉栄高から2019年初場所初土俵。埼玉・黒須中3年時に中学横綱、埼玉栄高3年時に全国高校総体個人3位、国体少年個人準優勝。最高位は西幕下37枚目。
(記録などは2019年九州場所番付発表時点)
(時事通信運動部・須藤駿)

 ◇春日野部屋 1925年、横綱栃木山が分家を許さない当時の出羽海部屋から特例として独立し、興した。横綱の栃錦、栃ノ海、大関の栃光、栃ノ心が育ったほか、35年から84年間、関取が途絶えていない。名人・栃木山以来の伝統で、立ち合いに当たって脇を締め、おっつけて出るのが春日野部屋の相撲の基本。アマ相撲出身者にも一から基本をたたき込む。そうした基本の上に技を身につけるので、息の長い技能派力士が多く育った。現在の春日野親方は元栃ノ海の先代から部屋を受け継いだ4代目の師匠。

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