大相撲 新星探査

元林改め欧勝竜 感謝を込めたしこ名で

 ◆肌で感じたプロの駆け引き

 ざんばら髪を振り乱し、がむしゃらに前へ出る。土俵に上がれば「絶対に引きたくない」との一心だ。近大出身の23歳。きっぷのいい押し相撲を武器に、昨年名古屋場所の初土俵から快進撃を続けてきた。
 序ノ口、序二段、三段目と7戦全勝優勝を続け、九州場所まで無傷の21連勝。アマチュア時代と比べて2倍の四股を踏むようになったおかげで、出足が力強くなったと実感した。東幕下14枚目で臨んだ初場所は4勝3敗。勝ち越したが、「勉強になった場所だった」。収穫だけでなく課題も大いに得たようだ。
 幕下上位との対戦を経験し、「みんな立ち合いの駆け引きがうまい。そこでどうやって自分の相撲を取れるか」と考えた。出世が早かった分、プロレベルの対応力は未熟だと自覚している。
 経験の浅さは鳴戸親方(元大関琴欧洲)が補おうとしてくれる。大学まで足を運んでスカウトしてくれた師匠。引退して6年たつが、まわしをつけて朝稽古の土俵に下り、その日の対戦相手を想定して稽古をつけてくれる。元大関の親方と胸を合わせ、「どういう相撲を取ればいいかのアドバイスをくれる。本当にありがたい」。

 ◆近大の先輩に続け

 初場所の7日目、近大で教えを受けた伊東勝人監督が急逝した。自身のことをいつも気にかけ、入門後も小まめに連絡をくれていただけに、さすがに平静は保てなかった。4番相撲で琴太豪にあっさり寄り倒され、序ノ口以来の連勝は24で止まった。「気持ちの弱さが出た。自分の相撲が取り切れなかった」。そう振り返ったが、気持ちを立て直し、亡き恩師に勝ち越しの報告ができた。
 朝乃山は大学の先輩に当たる。「学生の時から面倒を見てくれた。朝乃山関のような力士を目指したい」。2月下旬に近大相撲部を訪れた際には、伊東監督の遺影に向かってともに健闘を誓った。
 貴景勝とは同い年で、小学生の時から対戦経験があるという。得意は同じ押し相撲。体格も似た大関の背中を見て、「自分も頑張らないといけない」と思える。世代交代の先陣を切って走る両力士が、自分を奮い立たせてくれる。
 本名の元林で取っていたが、春場所からしこ名をもらった。「欧」の字は師匠のしこ名から、「勝」の字は父親の秀勝さん、伊東監督らから。周囲への感謝が詰まった「欧勝竜」の3文字。番付は4枚上がった。恩義に報いるべく、「竜のように強くなりたい」と願っている。
 ◇欧勝竜(おうしょうりゅう) 1996年4月22日生まれ、本名元林健治(もとばやし・けんじ)、大阪府出身、鳴戸部屋。近大から2019年名古屋場所で初土俵を踏み、序ノ口、序二段、三段目で全て全勝優勝。178センチ、171キロ。最高位は西幕下10枚目。
(記録などは2020年春場所番付発表時点)
(時事通信相撲担当・木村正史、写真も)

 ◇近大相撲部 1925年創部。祷(いのり)厚巳監督らの指導で全国学生選手権団体優勝8度を記録し、学生横綱(個人戦)も49年度の吉村道明(のちプロレスラー)をはじめ6人7度(長岡末弘=のち大関朝潮、現高砂親方=が2回)生まれた強豪。昨年も谷岡倖志郎がアマチュア横綱になった。大相撲では横綱旭富士(現伊勢ケ浜親方)ら多くの力士が活躍。現在も幕内の朝乃山、徳勝龍、宝富士、志摩ノ海、十両の朝玉勢らがいる。亡くなった伊東勝人監督は現役時代、「居反りの伊東」と呼ばれ、近大職員時代の91年にはアマ横綱となり、2001年から監督を務めていた。

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