大相撲 新星探査

神崎 同世代を追って突き押し磨く

 ◆アマ強豪、元豪栄道の武隈部屋へ

 身長192センチ、体重は150キロに迫る堂々たる体格の神崎。武器は立ち合いから一気呵成(かせい)に繰り出す突き押しだ。今年春場所、三段目付け出しで初土俵を踏むと、7戦全勝で優勝。夏場所では幕下に昇進し、6勝を挙げた。
 幕内力士が数多く輩出している近大相撲部の出身で、昨年の全日本選手権で準優勝するなどの実績を持つ22歳。相撲好きの祖父の影響で幼少期から相撲に触れてきたというが、大学の4年間で身につけたのは、「考えて取り組むとこと」。見守ってきた阿部智志監督は、「相撲に対してストイック。稽古以外でも、食事やトレーニングなどに気をつかって体づくりをしていた」と振り返った。
 幕内で活躍する豊昇龍や琴勝峰と同い年で学年は王鵬とも同じ。「一度きりの人生なので、そういう世界で活躍したい」。彼らの活躍が刺激となって大相撲入りを決意し、門をたたいたのは今年2月に新設されたばかりの武隈部屋だった。同じ関西出身の武隈親方(元大関豪栄道)は神崎の入門を、「強くなりたいという気持ちの強さを感じた。強くしてあげたいという気持ちになった」と歓迎。猛稽古で知られる境川部屋で心身ともに鍛え上げ、大関の座をつかんだ経験を、逸材育成に注ぎ込む意気込みだ。

 ◆幕下でも「自分の相撲」に手応え

 夏場所は東幕下59枚目。師匠から、「腹をくくって自分の相撲を取り切るように」と言われて上がった幕下の土俵でも、落ち着いた相撲っぷりを見せた。師匠に言われた通り、「特に変えることはなかった。番付は関係ない。自分の相撲を取ろうと決めている」と、5番相撲までは押しを軸に順調に白星を重ねた。
 デビューからの連勝を12に伸ばし、迎えた6番相撲は北播磨戦。関取経験豊富な35歳にうまく対応された。攻勢に出たが、いなしに体勢を崩し、押し出されてプロ初黒星。「途中で足がそろった。経験だと思う」。さっぱりと言い切り、引きずることなく7番相撲でも白星を挙げて場所を締めくくった。
 三段目では実力の違いを見せつけ、幕下では突き押しで攻め切れない場面もあったが、取り終えて「自分の相撲を取れば勝てると実感した」。自信ものぞかせながら、「次の場所に向けて幾つか考えてやらなければいけない」と課題も分かったようだ。武隈親方は、「下半身の力がもっと付けば、突っ張りの力も増す」と指摘。一本気な師匠と愚直に持ち味を磨き、ひたむきに稽古を積んで上を目指す。
 ◇神崎(かんざき) 1999年7月24日生まれ、本名・神崎大河(かんざき・たいが)、兵庫県出身、武隈部屋。近大4年時に全日本選手権準優勝。22年春場所、三段目100枚目格付け出しで初土俵。最高位は夏場所の東幕下59枚目。192センチ、148キロ。
(記録などは2022年夏場所現在)
(時事通信相撲担当・林拓斗、写真は同・木村正史)

 ◇三段目付け出し
 入門時の実力によって序ノ口からでなくもっと上位から取らせる付け出し制度は、古くからあったが、昭和に入ってから幕下付け出しだけになっていた。
 三段目付け出しが新設されたのは2015年。申請時に25歳未満であることと、全日本、全国学生、全日本実業団の各選手権大会と国体成年男子Aのいずれかでベスト8以上が条件とされた。三段目の最下位に付け出されるので神崎は100枚目格だったが、今年夏場所から三段目の定員が減ったのに伴い、現在は90枚目格となっている。
 三段目格付け出しだった主な力士には若隆景、豊山、朝乃山らがいる。

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