大相撲 新星探査

川副 小さな体に元白鵬が向けるまなざし

◆デビュー戦は朝乃山

 12月26日に発表された2023年初場所の番付。川副は6枚上がって東幕下7枚目につけ、初土俵から3場所目で十両昇進が視界に入った。
 初土俵は22年9月の秋場所。学生横綱のタイトルを手に元横綱白鵬の宮城野部屋へ入門し、幕下15枚目格付け出しのデビューだったが、それ以上に、1番相撲は相手が元大関朝乃山だったことで注目の取組になった。
 相手得意の右四つ、左上手を許して寄られ、土俵際で弓なりになって残す粘りを見せたが及ばず、寄り倒された。この場所は、アマチュアと違ってしっかり両手をつかないことがある大相撲の立ち合いに苦しみ、7番相撲で4勝3敗と何とか勝ち越した。
 「受ける相撲が多かった」と反省し、「大きい人にも押し負けない、攻める相撲」をさらに意識した初土俵だった。
 稽古場では、身長166センチの体が力士たちの間に入ると、さらに小さく見える。それでも十両力士との申し合いになれば存在感は増す。同じ小兵の人気力士、炎鵬を立ち合いで一気に持っていけば、身長2メートルの北青鵬には鋭く当たってから一瞬で後ろについて送り出す場面も。宮城野親方は「見ていて楽しい相撲だよね」と目を細める。
 東幕下13枚目で迎えた11月の九州場所では前に出る相撲も目立ち始め、5勝2敗で3点の勝ち越し。14日目には元幕内の矢後を蹴返しで破る鮮やかな取り口も見せた。

◆小さくても前へ

 相撲を始めたのは小学1年生。きっかけは保育園で出た大会で女子に投げられたことだったという。「小さい頃から一番小さい選手だった」と言うだけに「どれだけ大きい相手が来ても、絶対に気持ちの部分では負けない」ことを信条にしてきた。子どもの頃の憧れは大きくない体からの速攻で「F1相撲」の異名を取った元関脇琴錦(現朝日山親方)。過去の映像を見ながら「小さくても前に出る相撲で勝てるんだ」と胸に刻んできたという。
 現在、師匠からは「日馬富士のような立ち合いがいい」と言われている。白鵬と同年代で、軽量ながら活躍した横綱の、突き刺さるような立ち合いを日頃から意識させられ、当たる位置や角度を指導されている。それを可能にしそうなのは「自転車に乗るのが好きで、競輪をやろうとも思ったこともある」と言う鍛え上げた丸太のような太ももだ。

◆目標は豊昇龍、王鵬

 熊本県宇土市出身。同郷の正代は8学年上で、小中学校では同じ相撲道場で学んだ間柄。文徳高時代に全国大会でしのぎを削った豊昇龍、王鵬は九州場所で優勝争いに絡んだ。「どれだけ差が開いているのか知りたい。尊敬もしているし、目指したい、対戦したい力士ではある」。小兵を感じさせない相撲を伸ばして、幕内で対戦できるのを心待ちにしている。
◇川副(かわぞえ)1999年4月10日生まれ、本名川副圭太(かわぞえ・けいた)、熊本県宇土市出身、宮城野部屋。166センチ、110キロ。鶴城中時代に白鵬杯優勝。熊本・文徳高で国体優勝、日大で21年学生横綱などのタイトルを獲得。22年秋場所に幕下15枚目格付け出しで初土俵。押し、出し投げ、うっちゃり。
(記録などは九州場所終了時点)
(時事通信相撲担当・藤井隆宏、写真・陳翔)

◆宮城野部屋 1958年、引退した横綱吉葉山が一代年寄(貴乃花らとは別の制度)となって吉葉山道場を開き、のちに宮城野親方となって宮城野部屋に改称した。77年に元小結広川、89年に元幕内竹葉山が継承し、2001年にモンゴルから白鵬が入門。その後、北の湖部屋の元十両金親が元広川の次女と結婚して宮城野を継いだ時期があり、この間に白鵬が横綱に昇進しているが、元金親はトラブルも多く、10年に再び元竹葉山が宮城野となった。22年、元竹葉山の定年に伴って元白鵬が継承。東京都墨田区で北青鵬、炎鵬らを指導している。(2022.12.26)

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