2016スポーツ・クローズアップ

【体操】予選4位からの逆襲

 ◇揺るぎない信頼感

 体操日本男子がリオデジャネイロ五輪の団体総合を3大会ぶりに制した。エースの内村航平(27)が「個人総合にこだわりはない。団体のことしか考えていない」と渇望してきた金メダルだった。

 誰もが目を疑った。日本は予選でミスを連発。この得点は決勝に持ち越さないとはいえ、暗雲が立ち込めた。鉄棒の手放し技で落下した内村は「ちょっとまずいかな、と正直思った」と明かした。

 だが、メンバーに動揺はなかった。加藤凌平、田中佑典(ともにコナミスポーツ)、白井健三(日体大)は代表の常連。世界選手権で2014年に2位の悔しさを共有し、15年は優勝の喜びを分かち合った。山室光史(コナミスポーツ)にしても、15年は補欠としてチームに同行。ともに27歳で日体大時代に同級生だった内村から「来年は一緒に取ろう」と言われ、奮起して五輪代表入りした。チームの結束は固い。

 予選後、夕食の席で決勝に向けた話は出なかった。言葉はいらない。それぞれが何をするべきかは分かっている。そんな信頼感があった。

 予選の順位は決勝の演技順に影響するため、日本はあん馬からスタートし最終種目が内村、白井の得意とするゆかになった。考えようでは、この順番も悪くない。畠田好章コーチは「最後にゆかを演技して今の5人の歴史をつくればいい」と激励。選手は意を強くした。

 内村は「僕たちの頑張りも入って、めちゃめちゃ重たい」と金メダルを見詰めた。個人より団体に重きを置いたのは、体操人気を高めるためでもあった。その目的に大きく寄与する予選4位からの逆襲だった。(注=年齢は12月現在)

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