◇NZ破り五輪4強
リオデジャネイロ五輪7人制ラグビーで4強入りした男子日本代表。優勝候補だったニュージーランド(NZ)から大金星を挙げると、主将の桑水流裕策(31)=コカ・コーラ=はスタンドに目をやった。補欠の松井千士(同大)と藤田慶和(パナソニック)が抱き合って喜んでいる。「お前らのおかげだぞ」。涙で声にならなかった。
瀬川智広ヘッドコーチ(HC)は強豪を倒すための戦術を練り上げていた。攻撃では、できるだけ長い時間ボールを保持。防御時は囲い込む陣形で粘り強くタックルし、ロースコアの展開に持ち込む。1次リーグ初戦で当たるNZは「理詰めのラグビーだから対応しやすい」とみていた。
この戦術は豊富な運動量が前提となる。事前合宿は過酷だった。選手選考はコンディションを最も重視。2015年の15人制ワールドカップで活躍した山田章仁(パナソニック)と藤田、学生の松井の3人は人気選手だが、調整不足を理由に最終選考で代表から外した。
大会直前のサンパウロ合宿。代表メンバーがけがを恐れて雰囲気が緩んでいた中、補欠の松井と藤田が激しいタックルを繰り返していた。「あれで空気が締まった」と桑水流。指揮官の信念、選手間の信頼感でチームは一体となった。
NZを倒した日本はケニアとフランスも破って準決勝へ。メダルにはあと一歩届かなかったが、世界を十分に驚かせた。瀬川HCは「きちんと戦略を立て、信じ切ってやれば日本も勝てると証明できた」。日本協会は11月、NZ出身のカラウナ氏を新HCに据えた。リオでの経験を継承し、20年東京五輪で飛躍できるか注目される。(注=年齢は12月15日現在)
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