◇あふれた熱い涙
銅メダルが決まると、福原愛(28)=ANA=は両手で顔を覆った。「絶対に泣かないと頑張ったのに、最後は我慢できなかった」。リオデジャネイロ五輪の卓球女子団体3位決定戦。第4試合のシングルスを伊藤美誠(スターツ)が制してシンガポールに3-1で勝った瞬間、それまでこらえていた涙があふれた。
女子代表3人の中で最年長の27歳で臨んだ4度目の大舞台は、「今までで一番苦しい五輪だった」。2015年9月のアジア選手権から主将に就任。ただ、気配り上手に拍車が掛かり、それが自分を悩ませる要因にもなった。
04年アテネ五輪は15歳で出場。当時主将を務めた梅村礼さんは福原から「最近、梅村さんの気持ちが分かってきました」と言われたという。
リオ五輪の期間中は「負けても勝っても私が動じたら駄目」と自分に言い聞かせていた。シングルスでメダルを逃した翌日、石川佳純(全農)と伊藤の前では平静を装った。団体準決勝のドイツ戦は自身が単複で2敗し、ふがいなさに泣きそうになったが、何度も目元を拭って涙を隠した。
シンガポール戦の第3試合。ダブルスで、重圧を感じている伊藤に気持ち良くスマッシュを打たせようとつなぎ役に徹し、勝利を手にした。
「常に2人が最高のプレーをできるように、私が気付いたことは全てやった」。その献身に報いる銅は、日本卓球界初のメダルとなった12年ロンドン五輪女子団体の銀以上に輝いて見えただろう。
9月にリオ五輪台湾代表の江宏傑と結婚。競技は続け、「これから先、私が頑張ることで新しい道を切り開けたらいい」。後進に向けるまなざしは、あくまで優しい。(注=年齢は12月15日現在)
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