1995年にアマチュアとして初めて出場したタイガー・ウッズ(米国)は96年途中にプロとなり、その年に早くも2勝を挙げた。プロになって初めて臨むマスターズでどんな戦いを演じるか。開幕前からウッズが注目の的となった。
ところが第1ラウンド前半のアウトは4オーバーの40と乱調。したり顔の専門家は「タイガーがいくら大器であろうと、そう簡単にいくわけはない」と薄笑いを浮かべていた。
しかし、3歳でハーフ50を切った驚異の逸材は、そんな辛口の読みをすぐさま覆した。後半のインで猛チャージを演じ、6アンダーの30をマークする。前半の出遅れをあっさり取り戻し、2打の貯金をしてみせた。これで落ち着きを取り戻すと、66、65と2日連続のベストスコア。2日目に首位に立つと、独走態勢へ。最終日も69と伸ばして圧勝。幼少時からウッズを指導してきた父親のアールさんは「(優勝者が着る)グリーンジャケットと(ウッズの)褐色の肌は結構似合うものだろ」と満面に笑みを浮かべた。21歳は大会最年少優勝、18アンダー、2位との12打差は、いずれも大会レコードと、記録ずくめの優勝。ゴルフ界を震かんさせる勝利になった。
圧倒的な飛距離と、随所で見せる魔術のようなショット。新たな時代の到来を告げる天才の台頭に、大会主催者も対応を迫られることになった。99年にはフェアウエー外側のセカンドカットの芝を伸ばすことを決定。2002年からは相次ぐホールの延長に着手した。クラブやボールの進化もあるとはいえ、ウッズという大器の出現が、ゴルフ界に変革をもたらし、選手たちは地道な体力強化にも、それまで以上に取り組むようになった。
そんなウッズも2009年暮れに起こした自動車事故をきっかけに、女性問題が噴出。10年のマスターズまで大会出場を自粛した。離婚やコーチの交代などスキャンダルの余波はその後も収まらず、すっかり本業の調子を崩して10年はプロ転向後、初のシーズン未勝利に。ニクラウスが持つ18勝の最多記録への挑戦が注目されるメジャーでの勝利も、08年の全米オープンを最後に足踏みが続き、14で止まったままになった。
ニクラウスは「また勝ち始めるだろうし、最終的には自分の記録を抜くだろう」とウッズの復調を予想。その後、度重なるけがを克服して19年のマスターズに勝ち、感動の復活を果たしたが、万全な体調は続かず、21年2月には交通事故で重傷を負った。
新着
会員限定