ニック・ファルド(英国)が3度目の優勝を果たした同年の大会は、ファルドが勝った試合というより、グレグ・ノーマン(オーストラリア)がまた優勝を逃した大会としてファンの記憶に強く刻まれている。
当時世界ランキング1位のノーマンは、第3ラウンドを終えてリードを6打に広げ、念願のマスターズ初制覇に大きく前進したと思われた。しかし、最終日にまさかの78と大崩れ。12、16番は池に落とし、67で回ったファルドに、結果的に5打差をつけられて敗れた。ノーマンの優勝が絶望的になった最終ラウンド終盤は、ファルドもその心中を察して喜びを控え、ホールアウト後にノーマンを静かに慰めるシーンが印象的だった。
80年代から90年代にかけて抜群の強さを見せたノーマンも、メジャーとなると全英での2勝だけ。大試合では意外なほどもろかった。この時の敗戦はメジャーで通算8度目の2位。試合後、「またマスターズに負けたと言ったって、この世の終わりじゃない。あした目が覚めたらいつも通り呼吸をしていると思うし、銀行口座にはしっかり預金がある」と強がってみせたが、その言葉が逆に敗戦のショックの大きさを物語っていた。
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