1920年代に活躍した伝説のアマチュア選手、「世界最高のゴルファー」といわれた球聖ボビー・ジョーンズ。トップ選手だった彼が自らのアイデアと理想を注ぎ込んでコースを設計し、大会初代会長を務めた実業家のクリフォード・ロバーツとともに設立した大会には、選手たちのプライドをくすぐる要素が、あちこちにちりばめられている。
まず、世界中のゴルファーが憧れる名門ゴルフ場から「名手」と認められ、大会に招待されたという高揚感が選手たちを包む。もしそこで優勝するようなことがあれば、勝者には賞金やお馴染みのグリーンジャケットとともに、生涯にわたって大会に出場できる権利と、クラブハウスにロッカーが与えられる。毎年オーガスタを訪れ、オーガスタ・ナショナルに自分のロッカーを所有する喜びは、選手には絶大なものに違いない。クラブハウスには展示室やレストラン、宿泊施設もあり、出場するアマチュア選手は大会の歴史と伝統を学びながらここに宿泊を許される。
大会の開催週には、過去の優勝者だけが集う夕食会、「チャンピオンズ・ディナー」が開かれる。メニューを決めるのは、前年の優勝者だ。マスターズで一度は頂点に立ったことのある、選ばれた者だけが出席を許される夕食会で、ゴルフ談議に花を咲かせ、伝説の先輩たちとも親睦を深める。夢を実現したゴルファーたちにとって、自らが達成した偉業の重さをかみしめる時間が流れていく。
だからこそ、一度は出場したい。何度も出場して上位を争ったことのある選手なら、何としても一度は勝ってみたい。そう強く思わせる大会なのである。
新着
会員限定