ミグ29フルクラムは、旧ソ連のミグ設計局が1970年代前半から開発を始めた超音速戦闘機で、83年に実用配備が始まった。ロシア空軍は現在も300機以上を保有するとされ、事実上の主力戦闘機と言える。朝鮮戦争やベトナム戦争で米軍を苦しめたMIG15、MIG19、MIG21戦闘機を生み出したミグ設計局の伝統を受け継ぎ、軽快な運動性による高い格闘戦能力が売り物だ。小型だがエンジン2基を備えた双発戦闘機で、機体形状はスホーイSU27とよく似ている。ただし、SU27が要撃を主任務とした長距離防空戦闘機というコンセプトで開発されたのに対し、MIG29は最前線に展開して制空戦闘に従事する「前線戦闘機」と位置付けられ、求められる能力はまったく異なっていた。
MIG29の機体サイズは全長16.3メートル、全幅11.4メートルで、SU27に比べ2回りほど小さい印象。米国のF16C(全長15メートル、全幅10メートル)より少し大きいが、F16がエンジン1基の単発であることを考えると、双発のMIG29は機体をぎりぎりまで切り詰めていることが分かる。最大速度はマッハ2.3、離陸に必要な距離がわずか250メートルというのは、小型の機体に大出力エンジンを2基搭載しているからだ。もっとも、機体スペースの問題もあって搭載燃料は少なく、機体内タンクだけだと航続距離は1400キロ程度、増槽タンクを付けても3000キロ弱にとどまる。
MIG29は旧ソ連空軍に大量配備され、それを引き継いだロシア空軍でも数の上では主力戦闘機という形になってきた。ただ、切り詰められた機体にはマルチロール化するだけの余裕がなく、新しい時代のニーズに応えることが難しい。また、ソ連崩壊後の経済低迷の中で軍事予算が削減されたことから、老朽化した機体の更新や改良型の開発も進まなかった。このため、ソ連空軍の機体を引き継いだ旧ソ連邦の構成国や旧東欧諸国も、MIG29から西側戦闘機に乗り換えるケースが増えているほか、アジアなどの海外セールスでもミグはスホーイに遅れを取っている状況だ。
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