第2次大戦中、ドイツに次いで世界で2番目にジェット戦闘機を実用化した英国は、戦後も次々と新型ジェット機を開発したものの、なかなか音速を超えることができなかった。元々は電機メーカーだったイングリッシュ・エレクトリック社が、1954年に原型機を送り出したライトニング戦闘機は、2基のジェットエンジンを上下2段に重ねるという独創的な機体形状が特徴。縦に細長いボディに鋭い後退角を持つ主翼、機首の空気取り入れ口にレドーム(レーダーアンテナのカバー)を兼ねた衝撃波コーンを設けた姿は、見た目はもっさりしていても、空力的には優れていた。最高速度はマッハ2を超え、英国初の超音速戦闘機となった。
1960年から部隊配備が始まったが、高速と加速性は抜群で、同時代の米国製戦闘機に少しも引けを取らなかった。最終生産型のF.6は、全長16.8メートル、全幅10.6メートル、機体重量は約13トンと、双発戦闘機にしては軽量だった。高度を問わず機動性は良好で、約25年の長きにわたって英国本土の防空任務に就いた。海外でのセールスが振るわなかったため、生産機数は220機あまりと少ないが、英国航空史に名を残した高性能機と言える。
ライトニングの欠点は、機体スペースに余裕がなく、武装を多く積めなかったこと。特に主輪を胴体ではなく主翼内部に引き込む形式にしたことから、主翼下にハードポイントを設けることができず、対空ミサイルは胴体前部の両脇に装着した。また、燃料搭載量も少なく、後期生産型では胴体下面に内蔵燃料タンクを増設したほか、主翼の上面にパイロンを設けて、投棄型の増加タンクを設置する苦肉の策も取られた。60年代以降、英国は財政難からジェット戦闘機の独自開発に消極的となり、ライトニングの代替機には米国製のF4ファントムIIを採用。その後も国際共同開発に傾斜し、通常型ジェット戦闘機ではライトニングが最後の純国産機となった。
新着
会員限定