特集・懐かしの軍用機

オスプレーの祖先 X18

 ヘリコプターと固定翼航空機の利点を併せ持つハイブリッド型VTOLは、1950年代に開発が本格化した。米空軍が1956年にヘリコプター・メーカーのヒラー社に発注したX18は、プロペラのついた発動機の向きを主翼ごと変え、垂直離着陸と高速飛行を両立させるティルトウイング方式だった。2005年に実用配備が始まったV22オスプレーのティルトローター方式と近いコンセプトで、構造的にも無理がなく、当時から実用化の可能性は高いと考えられていた。

 X18は全長19.2メートル、全幅14.6メートルで、オスプレー(全長17.5メートル、全幅25.4メートル)よりも若干コンパクト。海軍が開発を断念したテールシッター型VTOL用のYT40ターボプロップエンジンを2基搭載することで、最大速度407キロ、航続距離360キロと、当時のヘリに比べ格段に高い性能の実現を目指した。既存の輸送機のボディーを流用し、実験機ではあっても最初からVTOL輸送機としての実用化を見据えていたのも特徴だ。

 オスプレーのような大きなローター(回転翼)ではなく、直径の短いプロペラ方式のため、地上で主翼を水平にし、固定翼機と同様に地上滑走してから離陸することができた。59年から始めたテスト飛行では、まず地上滑走から離陸し、飛行中に主翼の角度を変更する遷移飛行を試みた。しかし、19回のテスト飛行を繰り返しながら、ついに主翼を垂直にすることができず、ホバリングや垂直離着陸は実現できなかった。61年のテスト飛行で機体が大破すると、それを機会に開発は中止された。

 ティルトウイングやティルトローターは、主翼やローターの角度を変える遷移飛行の際、機体が不安定になりやすい。双発のX18は、エンジンが1基でも停止したり、回転が不安定になったりすれば、即座に墜落してしまう。しかも、2基のエンジンを別々に制御する方式だったため、操縦が極めて難しく、最後まで遷移飛行はできなかった。ただ、X18から得られた飛行データは、64年に初飛行したティルトウイング方式の4発VTOL機XC142、77年に1号機が飛行した双発ティルトローター方式のXV15などの実験機に受け継がれ、最終的にはV22オスプレーの成功へつながった。

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