貧しい少女が都会に出て女優となり、ついにはアルゼンチン大統領夫人となって貧困対策に奮闘し、「聖女」と呼ばれるまでに―。「エビータ」ことエバ・ペロンさんの33年間の人生はあまりにドラマチックで、ミュージカルや米歌手マドンナさん主演映画の題材にもなってきた。
1919年に私生児として生まれる。ブエノスアイレスに出て、自らの美貌(びぼう)を武器に、数々の男たちを足掛かりに成り上がっていく。43年に知り合ったフアン・ペロン大佐は一時失脚したが、労働者階級の支持で復活し、46年に大統領に就任した。
恵まれない少女時代を過ごしたからか。主宰するエバ・ペロン財団を通じて貧民救済運動に尽力し、その力強い演説は大衆を熱狂させた。半面で、夫人の過度の政治介入は知識人や富裕層に嫌われ、過去の男性遍歴もあって「売春婦」と非難する声も上がった。これほど毀誉褒貶(きよほうへん)が半ばする人物は珍しい。強烈な残像を残し、52年にがんで早世した。
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