2009年、映画「イメルダ~美貌と権力を手にした『女帝』の生涯」が日本でも公開された。フィリピン独裁者として約20年間君臨したマルコス大統領(1917~89年)の妻イメルダ夫人のドキュメンタリーだ。悪役とは言え、「主演女優」を張れるファーストレディーはそう多くない。
イメルダ夫人は29年、名門ではあるが裕福でない家に生まれた。若い時から自己顕示欲は強烈だった。ミス・マニラ・コンテストで次点となったことに納得できず、主催者の市長に怒鳴り込み、自分のために特別賞を新設させたエピソードが残る。
夫マルコス氏が65年、婚約時の約束通り大統領に就任した後は、夫人も国政に深く介入し、マニラ首都圏知事まで務めた。しかし、夫妻による国家私物化は国民の怒りを買い、86年の「人民革命」で国を追われた。マラカニアン宮殿には、夫人が所有していた3000足とされる高級靴が残されており、贅沢三昧(ぜいたくざんまい)な暮らしぶりが白日の下にさらされた。
ただ庶民の間では、マルコス・ファミリーの人気は根強い。2010年5月に実施された総選挙で、イメルダ夫人は下院議員に当選を果たした。
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