日本人宇宙飛行士の軌跡

宇宙に響け、琴の音色

 4月5日に打ち上げ予定の米スペースシャトル「ディスカバリー」で初飛行に臨む山崎直子さん(39)が、国際宇宙ステーションで琴の演奏に挑戦する。小さいころから琴を習い、「宇宙で弾いてみたい」と語っていた山崎さん。伝統工芸品「福山琴」の産地として知られる広島県福山市の和楽器メーカーが、全長わずか35センチの「宇宙琴」を製作、山崎さんに贈った。腕を振るった楽器職人たちは、宇宙に響く琴の音色を楽しみにしている。

 山崎さんは幼稚園から2年間を過ごした札幌市で琴を習い始めた。現在も自宅に琴があるといい、1999年2月に宇宙飛行士候補に選抜された際も「宇宙で琴を弾いたり、ダンスを創作したりしたい」と話していた。

 宇宙琴を製作したのは、福山市の「小川楽器製造」。昨年、講演で同市を訪れた宇宙航空研究開発機構の的川泰宣名誉教授から、山崎さんの思いを伝え聞いた同社社長小川賢三さん(76)が製作を請け負った。

 琴はすべて職人による手作り。普通の琴は全長が2メートル近くあるが、シャトルに持ち込めるよう35センチのミニサイズにした。無重力では床に置いて演奏できないため、底面を平らにし、両面テープなどで固定しやすくする工夫も。米航空宇宙局(NASA)の厳しい安全基準をクリアするため、接着剤などの成分にも気を配った。

 ミニサイズでも材料の木や金具は最高級の品を使い、「小さくても手を抜かず、完ぺきなものを作ろうと思った」。今年に入り、NASAから搭載を許可されたとの知らせが届き、小川さんは職人たちと喜び合った。

 「一番大事なのは無事に帰ってきてもらうこと。神事にも使われる琴は、お守りとしての役目もある」と小川さん。「琴を弾く様子が中継されたら、テレビで見てみたい。地球に戻られたら、福山にも来ていただき、お話を聞きたい」と楽しみにしていた。(2010/02/27)

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