図解
※記事などの内容は2017年3月25日掲載時のものです
北海道新幹線が開業して26日で1年。寒冷地での高速走行に加え、在来線との共用や海底の青函トンネル走行など、他の新幹線とは異なる特殊な環境下で運用されている。これまでトンネル内で4回緊急停止しており、安全対策上の課題を克服するチャレンジが続く。
◇「新幹線歴史上、困難な課題」
「貨物列車との共用走行は、新幹線の歴史の中でも困難な課題」。JR北海道は昨年8月にまとめた安全報告書の中で、運行管理の難しさをこう表現した。新青森-新函館北斗間(約149キロ)のうち、青函トンネルを含む約82キロを新幹線で初めて貨物列車と共用。線路は「三線軌条」と呼ばれ、3本のレールを並べ、うち1本のレールを新幹線と在来線が共用している。
三線軌条は貨物用と新幹線用の狭いレールの間に多くの部材が敷設され、保守作業が行いにくい。また、夜間に貨物が走行するために保守時間が2時間と通常の新幹線の3分の1程度しか確保できない。このため、JR北は貨物の運行ダイヤをずらすことで4時間の保守時間を確保できるよう、JR貨物と協議を進めている。
共用区間の青函トンネルでは昨年4月1日、新函館北斗発東京行き「はやぶさ」が、吉岡定点(旧吉岡海底駅)付近を時速約140キロで走行中、緊急停止。新幹線用レールと貨物線用レールの間に落ちていた金属片に電気が流れ、実際にはいない貨物列車がいると自動列車制御装置(ATC)が誤認したのが原因だった。
緊急停止後、JR北は青函トンネル内を清掃したが6月には3件の緊急停止がトンネル内で発生。いずれも在来線の列車がいるとATCが誤認していた。金属片によるレール間の通電を防ぐため、レール間にある絶縁体のかさ上げを実施したが、特殊な線路構造だけに不安は消えない。
◇速度引き上げ、安全確立前提
海底下にある青函トンネル内でのトラブルは重大事故につながりかねない。2015年4月には特急列車から煙が出て緊急停車し、乗客乗員129人が避難した。新幹線が走行不能になれば、避難場所がある定点からケーブルカーで地上に脱出する。救援列車が運行できない場合、徒歩で定点まで最長約10キロの移動を余儀なくされる。
共用区間では、すれ違う際の風圧で貨物列車が脱線などを起こさないよう、新幹線の最高速度は時速140キロに抑えられている。東京-新函館北斗間は最速で4時間2分。ライバルの飛行機と利用者獲得を競う中、新幹線より空路を選ぶ目安と言われる「4時間の壁」を切るため、JR北は時速160キロへの引き上げも検討しているが、安全対策の確立が大前提になる。
JR北の島田修社長は開業から1年を振り返る中で、重要な安全対策上の課題について、「雪と共用走行の特殊な設備による複合的な問題もあった。50年を超える新幹線の歴史の中で、北海道新幹線だけが抱える挑戦になる。経験を蓄積して、課題を克服する」などと述べた。
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