図解
※記事などの内容は2019年3月6日掲載時のものです
東京都江東区のマンションで住人の加藤邦子さん(80)が強盗に襲われ殺害された事件では、家に現金があるか事前に確認する「アポ電」(アポイントメント電話)とみられる不審な電話があった。本来は特殊詐欺の手口だが、今年1~2月に渋谷区でもアポ電がきっかけとなった強盗が計2件発生。近年は大阪府や神奈川県でも同様の事件が確認されている。
アポ電とは、親族、警察官、金融機関の職員らを装い、資産状況や家族構成などを確かめる不審電話。特殊詐欺を仕掛ける前にかかってくるため、警視庁は「犯行予兆電話」と呼んでいる。その後に詐欺の実行役が訪問するなどし、金をだまし取るのが共通パターンだ。
同庁によると、昨年都内であったアポ電は、通報があっただけで過去最高の3万4658件。前年より8747件増え、2年前の2倍以上となった。今年は昨年を上回るペースで急増している。
江東区の事件では、加藤さんが事件前の今年2月中旬、「お金がありますか」という電話があったと知人男性に相談していた。同一グループが関与した可能性がある渋谷区の初台と笹塚で起きた高齢者夫婦を狙った二つの強盗事件でも、事前に息子を装ったアポ電があったという。
アポ電強盗は東京以外でも起きている。2017年11月には神奈川県秦野市で、警察官をかたる電話を受けた80代女性が、自宅に侵入してきた男数人に手足を縛られ、現金約480万円を奪われた。18年8月には大阪府門真市の民家に金品の有無を尋ねる電話があった後、男らが侵入し高齢の住人を粘着テープで縛り現金約4万円などを奪った。
渋谷区の事件以外は実行役の男らが逮捕されているが、アポ電などへの関与は明らかになっていないとみられる。捜査関係者は「実行役の上に、さらに複数の人物がいることがあり、全容解明は難しい」と話す。
凶悪化する類似犯罪に、警察当局は危機感を強める。警視庁犯罪抑止対策本部は「留守番電話にして、非通知や知らない番号からの電話には一切出ないでほしい」と注意を呼び掛けている。
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