図解
※記事などの内容は2007年6月27日掲載時のものです
兵庫県尼崎市で2005年4月、JR福知山線が脱線し107人が死亡した事故で、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会は28日、原因について「運転士が日勤教育を懸念するなどして、注意が運転からそれた可能性が高い」とする最終報告書をまとめ、冬柴鉄三国交相に提出した。ミスをした乗務員に課す「日勤教育」や懲戒処分は「逆に事故を誘発する恐れがある」とし、JR西日本の安全管理体制を強く批判している。
国鉄民営化後、最悪の惨事。事故調は建議(提言)や所見として、非懲罰的な報告制度の整備や、運転士の注意力をそぐ列車無線の交信制限などの再発防止策を求めた。
車掌の責任や、同社が事故を予見できたかについては否定的な内容で、刑事責任追及に向けた兵庫県警の捜査にも影響するとみられる。
報告書によると、死亡した高見隆二郎運転士=当時(23)=は、直前の伊丹駅で約72メートルオーバーラン。始発の宝塚駅で眠気からか列車自動停止装置(ATS)を作動させたミスを引きずり、ブレーキが遅れた。
伊丹駅のオーバーランは日勤教育を受ける対象だったため、運転士は過少申告を車掌に依頼。車掌は「8メートル行き過ぎ」と報告したが、指令所が無線で報告内容の復唱を始めてから約5秒間に、現場のカーブ手前のブレーキ位置を通り過ぎていた。
報告書は運転士の心理状態について、車掌が口裏合わせに消極的と勘違いし、無線交信に聞き入ったほか、言い訳を考えた可能性を指摘。この結果、制限時速70キロのカーブに約116キロで進入し脱線したと結論付けた。
同社は多発したATSの設定ミスで対策を怠り、ブレーキの不具合なども放置していた。報告書は、事故後すぐに架線の停電措置を取らなかったのは「列車の運行を優先し、人命への配慮が欠けた」とし、安全を軽視する企業体質にも言及。「万全の体制を取ってきたとは言いにくい実態がある」と、徹底した安全性の追求を経営トップに求めた。
一方、後手に回ったATSの整備では、同社が「緊急性を認識するのは容易ではなかった」と判断。設置を義務化していなかった国交省の対応は評価しなかった。
車掌は制限速度を教わっておらず、カーブで非常ブレーキを操作する状況でなく、過密なダイヤは「余裕はなかったが、事故につながったとはいえない」とした。
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