図解
※記事などの内容は2019年9月19日掲載時のものです
東京電力福島第1原発事故をめぐり、業務上過失致死傷罪で強制起訴された元会長勝俣恒久被告(79)と、いずれも元副社長の武黒一郎(73)、武藤栄(69)両被告の判決が19日、東京地裁であり、永渕健一裁判長は全員に無罪を言い渡した。検察官役の指定弁護士側は3人に禁錮5年を求刑していた。
最大の争点は、2011年3月の東日本大震災での巨大津波を予見できたか。東電は08年、政府機関の地震予測「長期評価」を基に、第1原発に襲来する恐れのある津波高を「最大15.7メートル」と算出しており、▽長期評価の信用性▽事故回避可能性-を地裁がどう判断するかも焦点だった。
検察官役の指定弁護士側、弁護側双方の主張によると、東電の子会社は08年3月、長期評価に基づき、原発南側に敷地高(10メートル)を超える「最大15.7メートル」の津波が到達すると算出。結果は同年6月に原子力・立地本部副本部長だった武藤元副社長に報告され、翌月、再度報告を受けた武藤副社長が部下に「研究を実施しよう」と発言した。
勝俣元会長は09年2月の社内会議で、「14メートル級の津波が来るという人もいる」との幹部(故人)の発言を聞き、原子力・立地本部長だった武黒元副社長は同年4~5月ごろ、この幹部から津波高の説明を受けた。
指定弁護士側は「3人は敷地高を超える津波予測を聞いた時点で、自ら情報収集し、安全対策を進める義務が生じた」と主張。武藤副社長が「研究」発言で対策を先送りにし、「巨大津波を予見したのに対策を何一つ取らなかった」と非難した。
弁護側は「長期評価は信用できず、予想津波高はあくまで試算。対策実施は決まっておらず、先送りではない」と全面的に反論し、「対策をしても事故は防げなかった」と訴えていた。
新着
会員限定