図解
※記事などの内容は2019年5月15日掲載時のものです
2009年5月の裁判員制度導入からの約10年間で、9万人超の市民が裁判員、補充裁判員を経験したことが15日までの最高裁のまとめで分かった。判決を言い渡した被告は約1万2000人。裁判官だけの審理と比べ量刑が重くなる傾向がうかがえた一方、執行猶予判決の割合が増え、一部の事件では顕著に増加していた。
最高裁によると、制度導入前の08年以降、裁判官だけで審理された殺人事件の量刑は「11~13年」が最多だったが、導入後は「13~15年」がトップ。強姦(ごうかん)致死傷事件などの性犯罪や、強盗致傷事件、傷害致死事件も最多は「3~5年」から「5~7年」へと変化した。
執行猶予が目立ったのは、現住建造物等放火事件だ。裁判官が執行猶予を付けたのは被告の24%だったが、制度導入後の3年間は31%に急増し、その後40%まで増加。放火事件ほどではないが、他の事件でも増加傾向が見られ、殺人事件では5%から8%に増えていた。
保護司らの監督を義務付ける保護観察の割合も増え、導入前は執行猶予の被告の35%だったのに対し、裁判員では半数超の55%。裁判員が猶予期間中の被告を取り巻く環境にも関心を示していることがうかがえた。
裁判員裁判の審理期間は右肩上がりに長期化している。初公判から判決までの平均期間は、09年の3.7日が18年には10.8日まで延びた。初公判前に検察側、弁護側、裁判官の3者で争点を絞り込む公判前整理手続きは、平均2.8カ月から同8.2カ月と大幅に長くなった。
ベテラン裁判官は量刑の変化を「身近な事件で重くなる一方、介護疲れでの事件などで同情的判決が目立つ」と分析。長期化については、「導入当初は自白事件が中心だったが、複雑な事件の審理が増えた」との見方を示した。
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