図解
※記事などの内容は2018年12月29日掲載時のものです
「4兆7000億人に1人」とも言われる個人識別力を誇るDNA型鑑定は、平成の歩みとともに、捜査に欠かせない「武器」として定着した。警察庁によると、本格運用が始まった1992年に比べ、鑑定件数は1万倍超に増え、精度も飛躍的に向上。未解決事件解明の糸口としても期待される。
◇データベース活用し検挙
警視庁は2018年11月、女性が乱暴された10年3月の事件で容疑者の男を逮捕した。8年越しの逮捕の決め手は、男が別の事件で検挙された際に採取した口内細胞と、被害女性の衣服にあった遺留物のDNA型が一致したことだった。
警察庁は04年から、現場遺留物や容疑者のDNA型情報を記録したデータベースの運用を順次開始。18年11月末現在でそれぞれ約3万6500件、約115万件が登録され、余罪照会での一致件数は年間3500件前後で推移している。
世田谷一家殺害事件(00年)など未解決事件の容疑者のDNA型も残されており、警視庁幹部は「急転直下の解決もあり得る」と期待する。
◇年30万件鑑定
DNA型鑑定の件数、精度は平成を通して急激に増加、向上した。警察庁などによると、日本警察では89年に導入され、92年に本格運用を開始。技術の進歩に伴い、年間で22件(同年)だった件数は近年、30万件前後に上る。精度も、約4兆7000億人に1人の確率で個人を識別できるまでになった。
一方、過去には暗い影を落としたこともあった。90年の「足利事件」では、精度が「1000人中1.2人程度」とされた鑑定を警察が過大評価し、男性を逮捕。その後、現在と同じ精度で再鑑定が行われ、無罪が確定した。冤罪(えんざい)を起こしたのも無罪に導いたのも、DNA型鑑定だった。
同鑑定に詳しい関西医科大の橋谷田真樹准教授(法遺伝学)は「事件現場に他人の遺留物が残っている可能性もある。DNA型が判明しても容疑者と断定せず、別の証拠での捜査も必要だ」と指摘する。
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